閑話9−5【真壁秋ハーレム化に関しての傾向と対策】
厳しいガードを掻い潜り強行突破し、此花姉妹に対して真壁秋の事をどう思うか?、なんとか出した質問に対して、恐らく妹の椿の方であろうか、一言だけ、
「あれ、私達のだから、変な事したら殺すからね」と言う、彼女達の総意とも言える一言だけはもらっていた。
そして椎名芽楼に以外に協力的で、特に調査員に対して敵意も見せずに、真壁秋との関係性を尋ねると、「愛人です」と一言だけ言ったと言う。
会議は、そんな調査を行なった生徒達の一定の真壁秋と美少女達の関係性を改め公表して並べ立てる作業になり、一定数の発表が終了し、誰も自由にブリーピングな状態となって、恨み言などがその会場にあふれ始めた時に、その部屋の隅にいた女性とが手を上げて発言する。
「静かに、どうそ、名乗ってからからご発言ください」
と二肩に言われて、その生徒は、
「はい、西高の田丸 美琴です」
と言ってから、
「私はダンジョンウォーカーなのですが、私が知っている限り皆さんが注視する生徒は、相当に強力なダンジョンウォーカーです、彼に対してどのように処置するのでしょう?」
その声に直ちに反応したのが、南区にある私立高校の男子生徒だった。
一目で只者とは思えない鋭い眼光に、ただ立っているだけだというのに纏う雰囲気が既に攻撃的な気配を惜しむ事なく垂れ流している。
その上、その大きな体格も『格闘技』系の技術が詰め込まれているのがわかる。
そんな男子生徒が、真壁秋へ対する敵意も隠さずに言う。
「一気にたたんでしまえないのか? 一応、うちの高校には奴に対して近く果たし合いをしようと思うっている者も多い」
「それは大勢で、真壁秋を討つ、と言うことでしょうか?」
田丸はそのやり方というか方法について追求する。
すると、その男子生徒は、
「聞けば、真壁秋は良く自宅前で果たし合いに参加してると聞く、挑戦を行えば断ることは無いとも聞いている、しかも最近では自分より年下の女生徒に負けていると聞く、つまりはそう言うことだ、なら我々も、それに習うとしよう」
そんな発言に、二肩が、
「名乗ってから発言してください」
と注意を即した。
「南条高校の佐久間 明だ」
その声に、会場の一部からどよめきが走る。南条工業高校の佐久間と言えば、高武連、高校武道連盟の最高者であり、おそらくその中でも最強の猛者でもある。
このダンジョンのある北海道において、ダンジョンに入らない人物として猛者として数えられる者は一定数いる。
彼等の様にダンジョンに入らないという選択肢において、将来を世界大会規模での競技者として立場の者は一定数存在する。つまりはプロスポーツやオリンピックなどを見据えているのだ。そういう人間は、スキル等のダンジョンによる覚醒を嫌い、または資格停止を恐れてダンジョンには近づかない。
さらに彼は、北海道の最大武闘派組織札雷館にも通い、そこでは、北海道警察指南役に直接指導を受けていると言う噂もある。
しかしだからと言って、ダンジョンウォーカーを知らない訳も無い。事実、この佐久間という男子生徒は、果たし合いと称して、ダンジョンウォーカーを幾度となく倒している実力もあった。
しかも相手は深階層常連である。だから、彼自身にもダンジョンに入らない人物と言えどダンジョンを知らないというわけではないと言う自負はあった。
総合格闘技を、特に空手を嗜む佐久間にとって、これは奢りなどでは無く、まして相手を過小評価しているわけでも無くシビアに見つめていると自身はそう思っている節もある。
そんな佐久間に田丸は尋ねる。
「それはどの程度の戦力なのでしょう?」
直ちに佐久間は答えた。
「確かに奴は強そうだ、だからこちらも100人程度は用意する」
と言ってから、
「もちろん、俺が中心で立ち会わせてもらう」
高校武連の猛者が100人。そんな言葉にここに集まる生徒は皆固唾を飲み込んでいた。しかし、田丸は違う。
たった一言、
「足りません」
と言った。
言葉の意味はわかる、だが、佐久間の常識がそれを阻む様に、
「ばかな」
と思わず声を上げて、
「では、倍の200人だ」
と言う。もちろん、そんなはずは無い、そう思いながらも真壁秋を倒す為の人の数を増す。
すると田丸は、言う。
「彼が、真壁秋が1人で立ち向かった人間の数は、最近で、ある宗教団体の時ですら1000以上です、剣のみの戦いの時なら、万を超え億に届きます」
会場に揺れる様な騒めきが走る。
確かに強力なダンジョンウォーカーの戦力は高い。
常識外の力を持つものも一定数存在する。
しかし、この数、この戦力を1人でとなると、真壁秋の戦力は、個人のものとはいえ、強いとか強力とかでは無く、ただひたすら人を殲滅する効率良く他者を蹂躙する兵器に近い。と言うかまるで装置である。