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閑話9−2【真壁秋ハーレム化に関しての傾向と対策】


 品行方正は7:3分の髪型が激しく揺れて、黒縁のメガネはずり落ちている。


 「会長、ここは会議室とは言え、図書館です、もっと静かに発言して下さい」


 とその興奮冷めやらない長尾に意見するのは、彼と同じ学校にして、この組織の副責任者、通称、総会長でもある、彼の副官の二肩(にかた) 千草(ちぐさ)である。


 文系少年の割に体の大きな体格な長尾の横では少し小さめに見えるが、身長はあくまで平均的である。そんな二肩は、中肉中背でそれほど美人でも無いがどこか愛嬌のある顔を若干雲らせ、いきり立つ長尾を諌める。


 「い、いやあ、すまない二肩君、つい興奮してしまって」


 と、誰もが知る、本来の長尾に戻って言った。もちろん話題が話題だけに、熱くなるのは止む無いとも、いやむしろ、ここで熱くならなければどこで熱くなるのだと言う環境のもと、日常を逸脱してしまった彼はもともと穏やかな人間なのである。


 ここ、札幌市の中央図書館の会議室いは各校(中高学校)の代表が集められていた。各校代表が最低1名であり、中には長尾同様、副会長も連れてきているところもあるので、全員で300名近くの人間が集められて、まるで全校集会の様に、この大講堂に集まり演壇に立つ長尾を注視していた。


 年二回行われる各校による生徒会役員のフォーラムなどよりも出席率は高い。


 それ程の問題を、現在、ここに集まる中高生の代表を元より、この年代の少年少女は内包していると言っても過言ではなかった。


 と言っても、女性生徒の方とは言えば、男子生徒ほどの熱意は無く、中には呆れてる生徒もいるくらいで、その温度差は有り余るものもあった。


 そんな会議の場となっているここ中央図書館は路面電車で来れば専用の駅があるのでとても交通の便も良い。どんな所かも迷わずに来れるこの場所を選んだのは長尾であり、そんな気遣いの出来る人物でもある。 


 そんな彼らが文字通り雁首そろえて問題にあげている定義は、


 「真壁秋を今後どの様に取り扱うか?」「真壁秋による美少女一極集中型をどの様に崩して行くか?」


 であった。


 かつて、北海道ダンジョンにおいて深階層でも各組織の代表、実力者と呼ばれる面々が、ここまで大規模ではないにしろ、このダンジョンに置ける台風の目とも呼べる強力なダンジョンウォーカーの取り扱いについて、会議に掛かったことは記憶に新しい。


 中階層以降、深階層に入って尚、何かと話題に登る問題のある人物である。


 ここではダンジョンの外でも似た様な事態が起こっているのである。


 そして今回取りざたされる問題は、まさに生命としての根源、もしくは進化の末端としなして得なければならない義務、まさにこの世界におてい、原生にして、根本の問題でもあった。


 人とは、この為に国家を作り、社会という名の巨大なコミュニティーを作ったと言っても過言では無い。そんな問題だった。


 つまりそれは人を獣の範疇に引き戻してもなし得ないとならない正に社会を生きてゆく上での義務と言っても良い問題でもある。


 その責務は十分すぎる程理解できている。


 さらに端的に言うなら、『真壁秋だけあんな可愛い子達にモテてズルい』と言った方がわかりやすいだろうか? つまりはそんな内容なのである。


 「では、始めよう」


 長尾は壇上でそう呟いた。


 同時に彼の後ろの大型スクリーンに次々と人物の写真が投影される。


 東雲春夏、葉山静流、工藤真希、喜耒薫子、河岸雪華、多月 蒼、此花牡丹、此花椿、椎名 芽楼、桃井茜、鉾咲八瀬、北藤イネス、そして、プロジェクターからの投影による所のデーターが間に合わなかったのか、スクリーン横に、控えていた男子生徒が、一枚の写真を貼る。それは、百舌 藍の横顔だった。


 一斉に投影された少女たちのポートレート。


 その前で、長尾は叫んだ。


 「現在わかっているだけで、これだけの数の美少女たちが、たった1人のダンジョンウォーカーに独占されている、それは1人の男性による、そして、現実問題として札幌を代表す少女達のハーレム婚による既婚化が迫っている」


 とバン! と演台を叩く。


 続けて、長尾は吠える。


 「そして、ここに写された女性達は、我々、札幌市生徒会組合男子部により厳正な審査の上選出された『北海道選出美少女トップ10に他ならない」


 長尾は大きく息を吸って、そして叫ぶ様に言った。


 「このまま、この男に札幌市の、いいや北海道の美少女を全部奪われていいのか?! 今、こうしている間にも、あの『浅階層の悪鬼』とまで揶揄された男は、彼女達を好き放題してるんだ! これを黙って見ていていいのか!」


 長尾が今発言したそんな事実は実際、現実には無い。


 と言うか真壁秋本人からすると、彼女、ここで挙げられた美少女達との接点と接触面積は問題となることもない筈なのであり、さらに言うならその接触ですら、その美少女達の一部か彼に対して行われていると言う事実を彼らは知らない。


 そして重要なのは真壁秋にその意思は無い。しかしそれは決して問題視されるとこは無い、なぜなら、ここで重要なのは、自分(真壁秋)がどう思っているか? と言うことよりも他人(世間)からどう見えるかと言うことであるからだ。


 世間というか外部の目はそのようには見てくれないのは世の常でもあった。 


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