第131話【ドラゴンの腹にて休憩する秋の木葉】
確かにね、札幌の夜景は大人気だよ。特に藻岩山展望台からの街の景色は圧巻だよね、ロープウエイから登る時も、まるで夜に輝く星の海の様に見えるもの。函館山から見る夜景も有名だけど、こっちもいいよ、札幌からアクセス近いし、大通、ススキノからでも市電(路面電車)で直ぐに行けるしね、あ、この時、街からなら内回り乗らないとダメだよ、駅前通り側の駅ね。
それにしても、今僕らが見ている光景ってさ、遠くの夜景と星空だったから、夜景を綺麗に見ようと思ったら、ティアマトさんの、割と下を見下ろせる場所いかないと行けないから、良く見えたなあ、って感心する僕なんだけど、それに、
「あんまり歩き回ったら危なくない?」
というと、椿さんは呆れた様に、
「何を言ってるのよ、今飛んでるこの竜は私たちにって大地そのものよ、落ちる訳ないじゃん」
とか言われてしまう。そして、
「夜景は、ティマトのお腹の方まで行って見てきたのよ、あなた達も行って見るといいわ、歩きやすい所、案内するわ」
と言ってついて来てと先行してくれる此花姉妹。
え? 真面目に?
すると、今度は春夏さんが、
「行こう、秋くん」
って僕の手を持って歩き出す。
おお、本当に地上に対して真横に、つまり、今、ティアマトさんの首のあたりの横になってそのまま下に回り込む様に歩いているんだけど、街が、本来下である筈の街が僕の頭の上にある様なそんな感覚に見える。
「あ、秋先輩、待ってください」
って、どこにいたのか雪華さんが見たこともないへっぴり腰で付いて来ていた。
そうだよね、ここ高いもんね、いつもはダンジョンだからね。低く低くだからね。
仕方なく戻って、雪華さんの手を取ると、とても安心したらしく、すごくて喜んでいた。よかった、やっぱり怖かったんだね。スパイダー雪華さんになれば例えティマトさんが地面じゃ無くても大丈夫そうだけど、やっぱり、女の子だから高い所は苦手なのかな?
その後ろを付いて来る茉薙なんてものすごいテンションで、「うおお」とか、「すげー」とか言って喜んでるから、僕としてはそっちの気持ちの方がわかるよ。
で、結局、此花姉妹を先頭に春夏さん→僕→雪華さん→茉薙の順番い手を繋いで、仲良くティマトさんのお腹の方に歩き始める。
で、そうだ、蒼さん達も誘おうかなって見る。
すると、そのお腹のさっきまで普通にしていたんあだけどなあって思ってた横たわる3人組。横たわるってか大の字になってグッタリしている、かな? 本当に精も魂尽き果てたって顔してるけど、でもって、その一番端で、僕側にいた紺さんがびっくりした様に、
「蒼様! まだ早いっす、お館様ですはこちらにいるっす! 蒼様!」
って、紺さんに言われて、
そのままスッチャって飛び起きて、正座して、多分、僕を探しているんだろうと思うけどキョロキョロし出して、僕の存在を見つけて、
「お館様!」
とか言ってる。
いや、まだ何処も行ってないからね。でも、終わった安心からか、気が抜けてしまったって言うか、体力だけでなく気力も根こそぎ削り取られたくらいの表情だ。
で、もう1人、今回初見の藍さんは、一度横にした体が起き上がらない様で、そのまま寝そべっていて、
「すいません、立てません、無理です、もうダメです、このまま打ち捨てて下さい、もうそれでいいです」
とかダルイ感じで言ってる。本当に口しか動いてないから、体の方がボロボロみたい。
そんな藍さんを抱き起こそうとする紺さんだけど、
「いや、いいよ寝かせておいてあげて」
と言ってから、
「本当にありがとう、蒼さん、紺さん、藍さんも」
と僕はお礼を言った。本当に心から真摯に言った。