第123話【ブレ始める分身攻撃】
僕の腕には剣から伝わるさっきの2撃。
多分、間違いはない。
で、この違和感。
僕は蒼さんと対峙する、その姿勢から、軸足をわずかにズラして、その答え合わせをしようとする、多分………。
って思っていたところに、本物の殺意が、また狙いすましたかみたいに、わかりやすく僕の後ろから首元にかけて落ちて来る。
ぐわ! 重!
蒼さんたち以外に秋の木葉の人、まだいたのか?
なんとか弾くに留めて、そのまま前に流す。姿勢は変えないで、そのまま前に弾く。
危ない危ない。
蒼さんとの初見と同じ事を僕の体はしようとしてた。
この変って、葉山や茉薙との戦いで、随分改善された気がするんだよな。以前なら、襲われるまま、反撃してしまってだけど、その辺は止められる様になってきてる。
何より助かるのは、僕の剣、今は完全に刃を引っ込めてくれてるって事、今は蒼さん達に対して恐ろしいほどの切れ味は発揮していない。完全に峰打ちモードになってる。この剣も僕と共に成長しているんだなあ、と思うとどこか感慨深いよ。
それにさ、意思も載せずに反撃とかって、本当に強い人のやることではないんだ。本当に強い人って、攻撃にきちんと意思を乗せる。だから攻撃をする、目的とかその向こうに意味があるんだ。葉山と戦った時に嫌と言うほど感じた。必死に、とか、防衛本能を引き出された時点で僕のしてきた事は、母さんが僕に教えてくれた事を否定してしまうってことを。この辺をしっかりしてないと、きっと僕はこれから先、何も守ってはいけないだろう。つまりさ、一人前のふりして剣なんて奮っていけないって事なんだ。
そんな風に自覚する僕に、蒼さんは、すれ違い様、7枚の攻撃を放ちながら言うんだよ。
「お館様、お強くなられました」
「蒼さんこそ」
世辞なんてないよ、多分互いにそれは認める所なんた。
本当に強い。蒼さん。
以前はさ、あの時はさ、その刃に乗せている物は、狂気みたいなものが含まれていたんだ。いや、そこまでいかないかな、でも迷いとか、いや違うなあ、なんて言うかな、蒼さん自身を追い込むみたいな、瀬戸際の刹那と言うか、そんな感じだった。ともかく普通剣には何処かに何かを削り取るみたいな意識が乗っていたんだ。
でも今は全くないよ。
刃が活きて来てる。なんだろう、どこかで僕が僕自身の剣を受けているみたいで、ウキウキするんだよ、この威力を前に、確実に向けられているのは殺意って言うのにね。
そして、前にいる蒼さん。また来た。
ここで僕は漸く答えにたどり着いたんだ。
ああ、そうか、僕は最初からこの3人と戦っていたんだなあ、って、そう確信した。
いや、何でわかったかって言うと、足だよ足。
音がね、僅かにずれて初めて来たんだよ。で、今まで同じ種の音だったんだけど、それが剥がれてきてるんだ。ほんの僅か、普通なら気が付きもしない。
蒼さんは兎も角、いや二人目の人も凄いよ、でも3人目が疲れ初めてる見たい。僅かに違うってこの時点で初めて僕は知った。
そして感心する、やっぱり凄いなあ、秋の木葉の人達。
もう、後ろにはいないから、前から来る蒼さん達に集中する。
で、今度も僕から行く訳さ。
構える蒼さん。守ってる、守ってる。
自分自身じゃないよ、蒼さんが守ってるのは、多分だけど、今のこの攻防に遅れ始めてる人、多分、僕は初見だなあ。