第119話【姉弟対決(?)葉山静流も散る】
ことの成り行きを身も持っていた角田さん曰く、
「過保護な姉(?)よりも好きな女の子を取ったって感じですかね、文字通り、自分と一心同体だと思う込んでいた姉としてはいつまでも自分思いの弟の自立は受け入れ難い事実なんでしょうね」
そうか、ブラコンだったのか葉山。弟の方はすっかり姉の愛から卒業していた事実を目の当たりにしてショックと言うか衝撃を受けてる。
良くわかんないけど、頑張れ、葉山。と、そっとエールを送る僕だよ。
そんな葉山、もう目に涙を溜めて、僕に言う。
「ねえ、真壁、私もあっちで泣いてきて良い?」
ああ、ダメだった。既に戦いは終了していた。茉薙、葉山の心を切り刻んていた。
って、もう断れないよなあ、そんな顔されたら………。
で、事もなく葉山、未だ横寝して茫然自失な薫子さんのところに座り混んでブツブツ言い始めた。
「兄弟して容赦ないですよね」
ってそんな二人を見て角田さんは感心してた。いや茉薙は僕の弟じゃないし。僕もまた茉薙の兄じゃないから、って思ってるのに、
「マー坊の弟か、確かに似てるな、髪型も同じで仲がいいなハハ」
ってクソ野郎さんが感心して笑ってた。
「まあいいや、ともかく雪華の敵は俺が倒す!」
とか言ってる茉薙何だけど、その肝心な雪華さんはと言うと、
「秋先輩、本当に巨竜ティアマトを外に出すつもりですか?」
っていつの間にか僕の隣に来て、僕の顔を覗き込んで訪ねて来た。
え? いいの? こっちに来てしまって? 今は敵同士じゃなかったっけ?
「何やってるんだよ、雪華!」
って茉薙が言うも、
「ちょっと静かにしていなさい茉薙、今、大人の話をしてるの」
いやいや、僕らまだ中学生だし、大人じゃないよ。って言おうとするも雪華さん、顔近い近い。
で、茉薙とは言うと、そのまま躾された犬みたいに『待て』してる。凄いなあ雪華さん、本当に茉薙の調教、じゃなかった躾を完了してるんだな。
感心するばかりの僕に、雪華さんは何を思ったのか、
「わかりました、秋先輩がそこまで意思を固めているのなら私にも覚悟があります」
とか言っていた。おお、またスバイダー雪華さんになるのかな?って期待していたら、
「真希さん、申し訳ありませんが、私、秋先輩の方に付きますね、ギルド裏切ります」
と言って、あっさりと言うか完全にこちら側について、真希さんと対峙するように立った。もうすっかり仲間みたいな立ち位置で僕の横にいる。
「えー、雪華、そっち行っちゃうの?」
って茉薙は一瞬の嘆きの後に、
「じゃあ、俺もこっち」
と普通にテクテク歩いてこっち来た。
結局、ギルド側は真希さん一人になってた。
もっとも、まだ水島くんとか西木田くんとかいるけど、今はすっかり戦力外で、こんな様子を他人事の様に見ている。
もちろん、真希さん一人と言っても、真希さん一人でも僕にとっての脅威なんて変わりはしないんだけどね、多分、本気出せば、いや本気なんて出さずに一対僕等でもその戦力差は埋まっていないってのはわかるんだけど、わかってるんだけど、なんか真希さん相手には構えられないって言うか本気でないなあ、って思ってるんだけど、そんな僕なんて全く構わずに、
「ハハ、真希、流石にこれじゃ部が悪いな」
って言いながら俄然有利だとクソ野郎さん真希さんに襲いかかって行くんだけど、
接近→接触→拘束→投棄と言う綺麗な流れで、クソ野郎さんゲートの奥に放り込まれてた。
「ああ、ばか!」
ってアモンさんが付いて行っちゃった所で、ゲートは閉じる。これ、もう戻って来ないヤツだ。割と戦闘能力だけはアテにしていたけどあっさりと削り取られてしまう。