第108話【喜来薫子(精神的に)散る】
だいたいさ、そもそも薫子さんと僕では勝負にはならないんだよ。つまりは同じ母さんから剣を学んでいるのはわかるんだけど、薫子さんって上手に教わってはるけど、当時僕を教えていた反省からだろうと思うけど、甘いんだよなあ、母さん。確かに楽しそうで、微笑ましくはあるけど、薫子さんも相当に強くはなったけど、それでも僕の時とは違うんだよ。だからそんな母さんの結果としての僕と薫子さんには差があって当然なんだと思う。
「やっぱり、真壁の方に一日の長があるかあ」
と、その辺の事情を察してか葉山が言うんだけど、多分、教えてもらっている『質』とかも違うよ。
「じゃあさ、真壁、教えてあげて、薫子のどこが悪いか、どの辺が真壁と違うか、上手に教えてあげなよ」
とか言い出す。
もう、なんだろう、なんか、委員長かよ、クラスの揉め事を上手く解決する委員長さんかかよ、って思って、ああ、葉山委員長だった、って思い出した。
僕と薫子さんの戦いは葉山と僕の変な立場での妥協点の探り合いになってる。決着点の向かい場所を探す気の長い旅になってる。
ああ、いいのか時間が稼げるから、それでいいんだ、頭良いな葉山。
そうか、じゃあ言うよ、
「入りと出がなってないかも、特に入りは最悪だよ、腕の振りも大事なところでブレるし、そもそも体幹も悪いいかな、武器の重さと回転の影響で手の位置で一々変わるから、基礎を見つめ直した方がいいんじゃないかな、特に足腰とか、走り込みとか? あと、柔軟性にも欠けてると言うかなってない、だいたい相手の技量とかわかってないから自分の技量もわかってないし、どうも主観が前に出てない? 母さんに教わって強くなってるけど、気持ちや知識が向上してるのに、体や技術はついて行ってないってことだよ、後、薫子さんて、武器の強さに頼る傾向もあるから、その辺気もつけていかないと、油断とかに繋がるよ」
まだまだあるけど、ひとまず先にわかりやすいと所を指摘してみた。結構オブラートに包んで言ってる。
こんなところかなあ、って薫子さんを見ると、本当に、ガクって崩れてしまった。
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ちょ、ちょっとどうしたの?
って声が出る前に、
「真壁、言い過ぎ!」
って葉山に怒られてしまう。
ええ??? 言えって言ったの葉山じゃん、なんで僕を怒って睨みつけるのさ?
それに、まだあるんだよ、もっとある、でもなるべく改善しようのない事とか、改善に時間がかかる事って言わなかったつもりなんだけど………。ほんのちょっと意識すれば治る事とかだけ言ったつもりなのに。
本当に薫子さんorzな格好になる。
そんな薫子さんの所に、春夏さんまで行ってしまう。
なんだろう、気がつけば僕一人残されて、他の人はみんな薫子さんを慰める格好になってる、ああ角田さんまで行ってるなあ。
「真壁、姫様泣かすなよ」
って水島くんにも言われてしまう。
ええ?
「すごいな、真壁、口先だけで、姫様の心を真っ二つだ」
って西木田君にも変な感心をされてしまう。
「いやいや、剣も使わずに人を切り裂く必殺刃ですね秋さん」
やめてよ角田さんまで。ああ、そうか、この人、ってか神、ゼクト様だったから薫子さんの味方だよ、裏切ってなかったよ。むしろ味方だと思ってた僕の方がどうかしてたよ。
「秋、女の子にはもっと優しくした方がいいよ」
って頭上からティアマトさんにまでも言われる。本当に、こんな僕を見かねてって感じだ。いやあ、もう誰も彼も、右も左も………。
なんなんだよ、一体?