第96話【クエストクリアー!!】
僕は、この山の様な竜に、ティアマトさんに言った。
「あの、できればでいいんだけど、僕達、竜の髭が欲しいんだけど」
交渉の入り口的に、自分がここにいる目的ははっきりさせないと、って感じでサラッと言った僕なんだけど、その目の前に、ヒューン、ドスン! って落ちて来た、竜の髭。
え? 快諾?
で、竜もデカけりゃ、その髭も大きい。なんだろう、普通に大型トラックとかで持ってく位の大きさがある。
「え? いいんですか?」
「いいも悪いも、『アイギズの御守り』を作るのだろ? なら私のがいるだろうさ」
と言った。
「角田さん………?」
「アイギスの御守りは、身につけられるタイプの護りとしては最高峰です、今、ギルドが作ろうとしている物以上ですよ」
察して答えてくれた。こう言うところは助かる。多少なら意識を読まれてもまあ、いいかなって、思える。ん、つまり、それ以上ができる以上はこれで良いって事だよね?
「それに、この大きさですからね、ギルドの構成員全員に行き渡ってもまだ余ります、事実上、世界蛇の連中の状態異常による攻撃や呪いは完全に無効化できますよ」
と続けて言った。
「じゃあ、僕らの仕事は完了でいいのかな?」
「ええ、とう言うか、この目的でダンジョンを彷徨ってるギルドの手の人間も全てです、これでギルドは難なく世界蛇を攻略できるでしょう」
おお良かった、ミッションコンプリートじゃん。
って思ってたんだけど、なんか違うみたい。角田さんが悩んでるもの。
その悩みに葉山が付き合ってる感じ。二人して腕組んで悩んでる。
「どうしたの?」
って尋ねると、
「いや、この後の真壁の行動がね………」
「ええ、秋さんがどう行動するのかわかるんで、悩んでも仕方ないですが、悩んでいるんです」
と二人は言い方こそ違えど、似た様な事に悩んでるみたい。
そしてその更に隣で、
「私、意味なかったなあ」
とか七竈さんが言って落ち込んでる。確かにスキルを発動するまでもなかったし、春夏さんはジッとティアマトさんと見つめあってるし、好奇心に駆られた椿さんはペタペタとティアマトさんの体を触ってるし、黒き集刃の人たちは、鮫島さんと一緒にティアマトさんをバックに写メ取ってるし。
なんか、とってもグダグダになって行きそうな雰囲気の中、
「ねえ、秋くん、ティアママの、ティアマトさんのお願いを聞いてあげれないかしら?」
と言った。
ちょっとビックリした。
いや、だって、こう言う時って、春夏さんって、あまり積極的に物を言ったりしなくて、いつも、いつだって、「いいよ」って最後に言う人だからさ、本当にびっくりした。
うん、でも、春夏さんがそうしたいなら、
「そうだね、ティアマトさんを外に出してあげようか」
って僕も頷いた。
「ほら、絶対そうなるって思ったもん!」
葉山、もう叫び声に近い。
「まあ、そうでしょうとも、あの時も、ラミアの嬢ちゃんを守った時の事を考えれば、そう言い出すのはわかっていましたよ」
と二人して、とても長いため息を吐いていた。
そして、神様仏様ゼクト様は、
「まあ、嬢ちゃんがそう言うならな、後は秋さんが乗っかるんなら、もう行くしかないでしょう」
って言った。
「ちょっと正気なの? この竜を外に出すって! ………、ちょっと面白いわね」
と止めているのか止めていないのか、椿さんは、その目にワクワクの光りを宿らせているのがわかる。