第93話【秋の頭と角田の兄貴】
と角田さんは言った。
それと同時に、
「ああ、おばあちゃん、ご老公様の所ね、ゼクト様」
と葉山も言う。なんだ、葉山も知っているのか。ん、ご老公様?
「なんだ、そんな所があるんだ」
と僕が言うと、
「ええ、失念してましたよ、ちょっと『倒す』に捉えられていました、この辺じゃ、ちょっと有名なモンスターでしてね、まあ、あのラミアの嬢ちゃんとか、リリスに存在は近いです」
じゃあ友好的なんだ。
そんなの知ってるなら最初から行こうよ。って思うと、
「あのご老体、結構なひねくれ者ですからね、何か対価を求められるとは思いますが、今回の事は、事が事なんで無茶も言わないでしょう」
と角田さんは言う。
「じゃあ、そこに行こうよ」
と僕も俄然乗り気で言うんだけど、
神様仏様ゼクト様は、
「まあ、ちょっと普通のモンスターとは違う奴なんですが、、あいつ秋さんに余計な事言わないと良いんですがね」
と最後の方は、ブツブツ言っている。
で、結局僕等は、そのご老公樣の所に向かった。
まあ、セオリーは、鍵を見つけて、施錠を解いて、どこかに書かれているっていうヒントを見つけ、何箇所かダイヤル式の施錠を解いて、その部屋の前までたどり着いた。
今回、僕らにとって、ゲームとかで言うところの『最後の鍵』と言うか全ての施錠を開けることのできるマスターキーみたいな人がいるんだよね。もちろん七竈さん。
全ての鍵を解錠して、スイスイ進むと、その問題の部屋の前に、ものすごい数の人がいた。
巨大な、多分両開きの扉の前に、結構な数の人集り。
みんな深階層の冒険者なダンジョンウォーカーで、それなりの装備で、そこそこ厳つい感じな人集りが、一斉にこっちを向いて、そしてその中から、
「秋の頭!!!!!」
って叫んで来る人がいた。
ああ、なんだ、鮫島さんだった。
って事は、ここに集まってる人って、みんな『黒き集刃』の人達か。
って言うか、今、鮫島さん、頭って言った?
おかしいな、年齢的には鮫島さんの方が上の筈で、仮にそう呼ばれるにしても、一体、いつそんな風になったのか皆目見当がつかない。もしかしたら、蒼さんをはじめとして秋の木葉の人たちが僕の事をお屋形様、って呼ぶのが訛ったのかもしれないし、ともかくどこから突っ込んだら良いのか、鮫島さんはなんかニッコニコだし。
思わず不思議そうな、腑に落ちないって顔してる僕の方に向かって歩いて来る。
僕らの方をザッと見渡して、鮫島さんは、
「これは、角田兄貴、姉御達も」
と頭を下げた。
「頭、どうします?」
って角田さんが尋ねる。いや、ほんと、どうしよう兄貴。
すると、鮫島さん、
「頭達も、『古竜』の討伐に来られたんですかい?」
って尋ねて来た。
まあ、僕や僕らの呼び方の方は今はいいや、その中で聞きなれ無い言葉を聞いた。
「古竜って?」
って思わず尋ねる、僕が聞いたのはもちろん角田さんの方。
「これから会うご老公様ですよ」
って言ってから、今度は鮫島さんに向かって、
「お前達も、討伐が目当てか?」
って尋ねた。
すると、
「いえ、滅相も無いです、秋の頭ならともかく、俺たちなら束になっても敵わないですよ」
と謙遜とも無く、割と本音で鮫島さんは言うんだ。
「俺たちは、今回、秋の頭ともども、ギルドに世話になったから、俺たちなりに協力できないかと思って、竜の髭を分けてもらえないかと思いまして、実際、なかなか立派な髭のある竜っていないですからね」
と言った。
以外に少ないのね、竜の髭。もしかしたら、髭のある竜の方が珍しいのかもだね。
「で、こ老公はなんて言ってるんだ?」
「いやあ、扉も開けてもらえず、外からもう一喝ですよ」
「まあ、そうだろうな」
と鮫島さんの答えに角田さんは納得してた。