第87話 【竜の髭を求めて】
だって、姿が見えないと僕が心配するから、姿は見せるけど、それ以上の事も言えないし、って感じ。
いいんだけどな、そろそろ、角田さんみたいにネタバレしてくれても、驚いたけどそんなに衝撃的でもなかったからね。
でもまあ、それが僕個人の事じゃなくて、ダンジョン全体に影響を及ぼすなら仕方ないかとは思う。
どうやら、僕、自覚はないけどそう言うものに関わってるみたいだし、順番通りに紐解くとか時間を待たないといけいない系、みたいな立場にいるらしいから、あくまで、今の現状にある物からの推測だけどね。
でも、まあ、そういう事なら今はいいや、って思う、それより、
「ごめん、失敗しちゃったね」
と僕は春夏さんに抱きかかえられたまま、七竈さんに言った。というか詫びた。
ひとまず、今はこっちだ。
「いえ、こちらの方こそ、申し訳ないです、また失敗しました、奪えませんでした」
とシュンとして言った。
見た目の身長は僕と同じくらい、でも結構な可愛い系の女子。髪をお団子にまとめて、本当にすまなそうに謝るのは、『ダンジョン鍵組合』の七竈 瑞穂さん。
ちなみに彼女、ギルド承認のクラス持ってて、つまり職業的な奴、『ローグ』なんだって。確か、ローグって、『ならず者』とか『悪党』とか『盗賊』的な人らしいんだけど、なんだろう、彼女の場合、本当に品行方正で真面目そうな感じ、言葉も喋り方もすごい優等生さんだし、いい意味で、職業名をへし折ってる感じがする。高校2年生って言ってた。
今回、同じ鍵組合の、僕の恩人というか、このダンジョンにおいての僕に対して存在する全ての罠、施錠の解除を担当してくれている、久能 次男、通称、鍵師。そして自称ツギさんのお願いで、総じて言うと、ギルドの直接の以来なんだけど、その彼女を連れて、なかなか強敵なドラゴン系のモンスターが跋扈する、割と、ダンジョンウォーカーの中でも有名な場所、深階層の真ん中くらいいからちょっと深部で飛び地なこの場所、『通称ドラゴンロード』で僕らは戦いを繰り返していた。
つまり、ドラゴンがよく出る道。通常、部屋にしか現れないモンスターなんだけど、こういった特定のモンスターが出る『道』って深階層もこのくらいの深度になってくると結構な数あるらしいんだ。
「一旦、そろそろ休まない?」
そういうのは、今日もついてきていた此花椿さん、妹さんの方。
「いえ、大丈夫です、もう少しやらせてください」
と七竈さん。
「休みなさい、疲労が溜まった体じゃ上手く動かないし、その上、体が怠けてる動作とか覚えてしまうわよ、こう言うのがスランプの元になるんだから」
と言うのは、実は、この手のスキルも持っている葉山だった。だからこそ言えるんだと思うけど、それでも年齢的にいうなら、七竈さんの方が年上のはずなんだけど、良いのか、葉山は聖王様であらせられるから、良いのか。
「ダンジョンに入ったら、年上も年下もないでしょ? それに、こういう事って言える人間が言える時に言わないと何もかも手遅れになるケースが多いのよ」
だから、僕の思ったことに答えないで、ちょっと思っただけじゃん。
なんか葉山、僕の方見てプンスカしてる。つまり、葉山は言える人って事だね。