第86話 【最近の桃井君事情】
もともとファイヤードレイクって、レッサー種だけど、翼とか無いけど、力と、その激しい炎とか火球を吐く見た目ティラノサウルス似のイケメンドラゴンで陸上特化。能力的には結構強力で、その上、頭は恐竜並みで本能だけで襲いかかって来るやつで、特徴としては顔がでかくて口が相当大きくて人間どころか牛や馬まで一飲みしてしまえるくらいの大きさなんだよ。
で、その口の中にストライクな僕だ。
結構な勢いあったから、噛み砕かれもしないで、そのままニュルンと喉も素通りで食道に吸い込まれて行く。
ヤバイなあ、これ僕にとってダンジョン初死だよ。このまま胃に落ちて消化されてしまうよ。
って思ってたら、いきなり外に放り出された。
うん、なんか、食べるの拒まれたみたいな感じ。
嗚咽と、咳と、顔の激しい振りで、思いっきりファイヤードレイクの口から外に放り出される。というか、ぺってされる。
なに? 僕、不味いって事?
外に吐き出された僕は、床の上に叩きつけられる前に、春夏さんに抱きかかえられて、事なきを得る。
「この!」
ってその流れで、いよいよ本気になった葉山がバルカを抜くのだけれども、そのままファイヤードレイクは逃げ去ってしまう。
逃げ足早!
流石、別名『健脚竜』って言われるくらいの走り去りっぷりで、追うのも諦めてしまうレベルだよ。
全くやる気の無い角田さんは、そのれを目で追いつつ、
「秋さんのお味がお気に召さなかったようですね」
とか言われる。いや、角田さんも不味いってラミアさんの時、自分て言ってたじゃん。僕も不味かったかもだけど。
それにしても、今気がついたけど、このダンジョンて、割と大きなモンスターとかもいるけど、あんまり食べられる被害とか無いよね、僕は積極的に相手の口に飛び込んじゃったけど。
これだけモンスターと出会って見てるけど、未だに食事をしている所に出くわしたところがない。
今度、フアナさんにでも聞いてみようかな?って思って、あ、桃井くんがいたなって思って、ちょっと焦って探すと、みんなからちょっと離れた所にぽつんと立ってて、に声をかけようとするんだけど、きっと何も喋ってくれないな、って思ったから、まあ、そんな事またの機械ではいいや。
あのゾンビ騒ぎ以来、桃井くんは僕達の元に帰って来てくれたんだけど、最初はさ、
「何か事情とかあるの?」
って尋ねたんだけど、
「ごめんなさい、秋様、今は言えません」
っていうから、そっか、じゃあ、
「じゃあ、いいよ話さなくて」
って言ったら、こうして一緒にダンジョンには来るのだけど、必要最低限の会話もしなくなってしまった。
ほんと、無言。何も喋らない。でも一緒についてくる、って感じ。だからなのだろうか、最近、桃井くん僕の影にも入らないんだよな。
心情的には心配だけど大体目の前にいるから、今後は守って行けるからこれでもいいやって思ってる。
そんな桃井くんが口を噤む直前に、
「僕が何を言っても秋様のためにはならないんです、今は何も言えません」
って言ってたから、多分、僕の忘れている記憶にも関係しているのだろうと思う。何かの拍子に言ってしまいそうになるのを恐れているみたい。そしてそれは僕の為、みたいな」桃井くんにとってギリギリの処置な感じがして、今、こうして彼がいる事自体が譲歩の瀬戸際みたいな感じなんだよな。




