第83話【春夏さん家のお母さんと僕の母さん】
それはいいんだけど、僕としては円満に行けば、僕のプライドなんてどうでもよくて、3千回回って『にゃん』って言ってもやぶさかではないんだけど、今のこの出会いというか、春夏さんのお母さんとの関係はちょっとめんどくさいって思ってる。つまり、複雑なのは予想できるんだ。
野生の妹って多分、教えるって言うのだからきっと僕の母さんの事を指すんだろうなあ。とは思う。
母さん親友って言ってたけど、どう考えてもそう言うタイプの知り合いじゃ無いよね。
でも、どうしてだろう?
僕、この人、春夏さんもお母さんからそれほどの悪意は感じないんだ。
うーん、なんて言ったらいいのかな、口の悪い親戚の伯母さん、て感じに捉えてしまう。言ってる言葉も表面だけ、だから痛さも感じてない。春夏さんのこの反応を見ていると、ちょっと感覚的に鈍いのかもだけど、ほんと、そんな感じ。
そんな、未だここでの自分の立場というか、この時点でどんな発言をしたらいいのか、正直迷う僕なんてほっといて、春夏さんお母さんは、どんどん話を進めて行く。
「秋ちゃんは何も聞いていないかもしれないけど、私たちは春夏がダンジョンに入るのは反対だったのよ」
とか言わる。そして、ダンジョンに入る事を反対されていたと言われた春夏さんは、ちょっと見たこともない顔して自分の母を睨みつけてる。
「ちょっと、春夏、怖いわ、そんな顔やめなさい、秋ちゃんもびっくりするわよ」
って言われて、春夏さん僕の方を見て、ちょっと戸惑って、困った顔して、そしてどんな表情を作っていいかもわからないって顔して慌ててる。
大丈夫、いつもの美人さんだから、平気平気。って笑顔で返す僕。
「春夏もね、一生懸命に頑張っていた『剣道』もダンジョンに入って、もう大会(公式)出れなくなっちゃって、お父さんも悲しんでたでしょ?」
ああ、そうか、ダンジョンに入って、特にスキルとか発現してしまった人って、もう、一般の人間って認識されなくて、スポーツの大会とか出れなくなってしまうって話聞いた事あるなあ。特に公式な奴。武道は以外に緩いけど、それ以外の競技は一度でもダンジョンに踏みい入れたらもうだめみたいなんだ。だから、ダンジョンに絶対に入らない人たちって大抵はスポーツに人生を傾けている人達で、概ねプロスポーツに行っちゃう人達も多いみたいだね。
それに、ダンジョン以前に、なんらかの形でスキルを発動してしまった人は、自分の意思なんて関係なく、どんなに才能があっても、そのスキルがどんな内容でも、公式の大会には絶対に出してもらえなくなるんだって。確か、結構有名なサッカーの特待生が、そういう風になって今はギルドにいるって話、聞いたことがある。
だけど、春夏さんの場合、サムライを形作っているスキルの発現によって、ダンジョンに入る入らない以前の問題な気もするんだけど………。
そんな風に、僕はちょっと困惑していた。いや、だってほら、春夏さんの家の話だもの。僕が口を出せる問題でもないよね?
「何? 秋ちゃん、他人事みたいな顔して」
ああ、そうか、この人、伯母さんだった、って事は家族ても無い身内だった。
ん? って事は、僕のお父さんとかお母さんの兄弟って事?????
それ以前に僕と春夏さんって、幼馴染って関係でさらに従兄弟って事?
「いくら、今日花が家を捨てたとは言え、あなたが私の甥である事には変わりないのよ?」
母さんの方だった。
うちの母さん、と言うかうちの両親ってそう言う事を全く話ないから、特に親戚づきあいともしないし全く事情が無いのか、それとも壮絶な事情があるのか、どっちかだとは思ってたけど、どうも後者っぽいなあ。
「何も聞いてないのね、可哀想に、いいわおばさんが教えてあげるわ」
とまるで事情を知らない僕を哀れむ様に春夏さんのお母さんは、その自称僕の伯母さんは言った。
でも、口を挟む。
「いや、そう言うのはいいです」
すると伯母さん、びっくりした顔して、
「どうして?」
って聞いた来るから、
「いや、だって、母さんが話してくれない内容を他人から聞いてもダメだと思うんですよ」
うん、本当にそう思う。特に当事者から話を聞かないとね。
すると伯母さんは、ニッコリと笑って、
「ほんと、そう言う所は今日花そっくりね、バカに見えて、カンが良い、そして、よく考えてる、賢い子ね」
って言われる。
今の時点でこの伯母さんが僕の敵というかお母さんの敵までも行かないけどそれに近い人だとしたら、僕の判断は間違ってないって事になる、そしてただ単に口の悪いだけのお節介系の親切な伯母さんだった場合、ちょっと失礼した事になる。まあ、僕、甥っ子みたいだから、この程度は許されるよね。
そうしたら、伯母さんは、ちょっと悔しい、見たいか表情から一転して、本当に裏表の無い表情で笑って、
「まあいいわ、でもね、これだけは忘れないでちょうだい、今日花はともかく、私はあなたには感謝しているのよ、だって秋ちゃんは春夏を連れて帰って来てくれたんだら………」
連れて帰った? なんの話?