第61話【ダンジョンは取り放題かけど海ではダメだよ】
(サブタイトル「かけど」→「だけど」) じゃあ、トキシラズ討伐のために頑張ろうかなあ、って思ってはいるんだけど、それなりに倒してはいるんだけど、今はまだ、『チカ』と『シシャモ』くらいかな、しかも一匹づつ。僕らの戦果は。まあ、どちらも相当に美味しい魚ではあるんだけど、食卓に乗るのがこの二匹だと、劇的に寂しい夕食になる。
僕は一瞬、視界の端に見えた、あの銀鱗を、あの豊かな姿を、決して気のせいでは無いと自覚して、その行手に進む。迷いなんてなかった。
例え、僕が、ブリとサワラの見分けが付かなくたって、ノドグロとアカムツの違いわ分からなくたって、あの銀麟を見間違える筈がないんだ。
僕らはどんどん部屋の中心に向かって進んで行った。
あれ? 気がつくと、角田さんがいないや。
探してみると、もう夢中になって、今度は『アワビ』とか取って食べてた。
普通に生で、器用に貝殻を剥がして、中身をペロンと食べてた。
こっちのアワビって、小さいんだよね、だから味が凝縮してて美味しいって言われてて、一口で行ける。焼いてもいいけど生が一番って人は多いね。
それにしても、取った端から食べてる角田さんを見てると、なんか原始人の食事ってああだったんだろうなあ、って思いをはせてしまう。
箸も食器も無い、目についた食材を食べられるものとそうで無い物を選別して、ただ食らう純粋にただひたすら食欲を満たすための食事。
もう、夢中になって食べてる。
あ、でも海でこれやったらダメだからね。
ダンジョンはいいけど、普通に地上の海でやったらダメ。
北海道周辺の海には、貝とかウニとか、育ててる漁場も多いから、何年も大切に育ててるから、勝手に取って食べてしまうと、それ密猟だから。『漁民は泣いている』から。
もちろん、そう言った魚介類を取り放題(有料)を売りにしてるところもあるから、かならず確認しようね。
そうしないと、密猟=窃盗になっちゃうからね。
あと、北海道の川も、管理水面が多くて、シーズンによっては全面禁漁になる場合があるから、これ、鮭とかの保護のために、川を遡上して産卵する鮭とか鮎とか守ってるから、北海道と道民の努力によって、鮭とかは僕の家の近くの豊平川でも、至る所の支流以外の小さな川でも見られる様になってるからね。
北海道の資源を守らないと、だよ。
もちろん、ここ、ダンジョンは別だからね。
ほら、角田さんも、マナーを守って、食べ終わった殻とか、持参して来た袋にちゃんと入れてるから、偉いなあ、って思ってしまう僕だったよ。
で、僕は魚の方だ。トキシラズの方だ。
以前の、クリーピングコイン(円)同様に、これらスカイフィッシュな鮮魚は、ある一定のダメージを与えると倒せるんだけど、ここは加減が必要で、やりすぎると、その美味しい個体に、調理不能なダメージを与えて、つまりは損壊してしまうし、また、浅すぎるとダメージは全く通らないって言う、加減が必要になって来る。
一番良いのは、『刃物』による攻撃なんだけど、それで刺すとかが一番良いのだけれど、今の僕らのパーティーは全員、装備しているのは『鈍器』だし、これって、一番、スカイフィッシュに向いてない武器って言われてるんだよね。
まあ、それでも、僕らを襲って来て、チカとかシシャモくらいはなんとか倒せて手に入れたけどさ、丸々太ったイワシとか、加減がわからなくて粉砕してしまったもの。
近海モノの鮮度の良いものは柔らかくて油の乗ってお刺身にるすると、口の中で溶けちゃうくらいの個体が多いイワシなんだけど、そろそろ、鈍器にもダンジョンにも慣れてきたかなあ、なんて思って振りぬいてしまったらイワシも頭部から腹部あたりまで木っ端みじんになってしまった。
おかげて、今日、ギルドに寄って借りてきたレンタルソード『蒼き静氷のグレパシスト』、ほら、昨日、君島君さんに僕のオンコの棒、へし折られてしまったからさ、今日は青いソフトビニルの剣を借りてきてるんだ。
でもそのレンタルソード『蒼き静氷のグレパシスト』も持ち手の柄までベタベタしている上に、内臓とかもひっついちゃって、生ゴミまで行かないまでも持っているのも躊躇われる感じになってるよ。