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第82話【春夏さんのお母さん?!】




 その君島くんさんは、


 「春夏、もうここまでだ」


 と言った。何がここまでここまでさっぱりだったから、思わず春夏さんを見ると、

春夏さん、ちょっと辛そうな顔してる。そして、僕の腕を、と言うか服の裾を掴んだ。


 「お前もいつまでもナイト気取りとかしてないで、春夏をこっちによこせ!」


 とか言って来るから、なんだこいつって思って睨みつけると、多分、僕との過去の対決を思い出して、君島くんさん、ちょっと引いた。


 そして、その人は現れたんだ。


 「春夏! いい加減にしなさい!」


 僕らの後ろからピシャリと響く声には、強制を伴う、そしてかなりの上からの声の様に聞こえたんだ。頭を掴まれてるみたいにね。


 そして、春夏さんは言った。


 「お母さん」


 え? この人、春夏さんのお母さんなの?


 思わず振り向いて見てしまうと、確かに春夏さんのお母さんだって顔して、結構きつめに僕の方を睨んでいた。


 と言うか、確か、春夏さんのお母さんて、うちの母さんの親友って言ってた筈だけど、女性の歳とかわからない僕だけど、うちの母さんよりもかなり年上に様に見えるのは決して春夏さんのお母さんが怒っているって訳でもないだろうな。


 「ありがとう、君島くん、あなたの言うとおりダンジョンに入ろうとしていたわね」


 と春夏さんのお母さんが言うんだ。


 ああ、そうか、さっき「ダンジョンに入ろう」って言っていた春夏さんの言葉が冗談に聞こえなかったのはこんな気持ちがあったからかなんだな。


 そんな春夏さんを察する僕は、春夏さんのお母さんの顔を見て確信に至るんだけど、ほんと、すげー怒ってる。


 春夏さん、何かやらかしたんだろうか?


 僕の初めて見る春夏さんのお母さんは、表情ひとつかえずに、


 「さあ、春夏、帰りますよ」


 思わず僕は春夏さんを見てしまうと、春夏さんはまっすぐ春夏さんのお母さんの方を見つめていて、


 「嫌です!」


 って春夏さんにしては珍しく大きな声を上げた。


 そして僕と春夏さんの体の位置が変わる。


 僕の前に春夏さんが出る。まるで僕をかばう様に、危険な相手から守る様に。


 その春夏さんの体に押されて、下がる僕、おお? って感じ。


 それにしても、僕、この春夏さんのお母さん、春夏さんに似てるなあ、親子だから当たり前か、でもなんだろう、春夏さんと違って全く柔らかさとかないな、今、怒ってる所為かもね、そして全く見覚えがないなあ。流石にいつものダンジョンで人の顔忘れてしまう僕だけど、でも、本気で初見な気がするんだ。


 ダンジョン以前に僕は春夏さんと会ってる筈なんだけど………。


 何回か、って言っても本当に数えるくらいだけど、僕は本州で春夏さんに会ったことがあるんだけど、その何回かも剣道の大会とかだから、特に春夏さんの家族に一緒に会ってる訳じゃないんだよなあ、いつも春夏さんの方から僕を見つけてくれたし、あ、でも僕も春夏さんって遠くから見ていても分かったなあ。それでその時、僕も誰かを伴って一緒にいたわけもないし、今、ここで気がつくけど、僕、驚くらい春夏さんの事を知らない。


 それでもさ、僕の前で必死な春夏さんの横顔とか見てると………。


 なんだろうなあ………。


 本当に嫌だなあ………。


 春夏さん、困ってる。


 ちょっとこう言うのダメだなあ………。


 僕は………、僕が………、僕と………なんで邪魔するかなぁ?


 「秋くん!」


 って、一瞬、なんかボーッとした思考になっていた瞬間に春夏さんに呼び返される。


 「大丈夫だから、私、平気だから」


 と気がついたら、春夏さんに肩を掴まれてブンブンされてる僕がいた。


 うん、大丈夫、ちょっと痛い、で激しいよ春夏さん。


 「ああ、ごめん」


 とか謝ってしまう。その表情を見て春夏さんは、ホッとした顔して、僕もその顔見てホッとしていた。


 なんだ? これ? 僕の感情って、春夏さんが良ければそれでいいのか?


 ちょっとこれもおかしくない?


 自身の思考に突っ込んでると、今度は春夏さんのお母さんが、


 「秋ちゃん、久しぶりね、大きくなったわね」


 って微笑んでくるけど、目がさ、初見の時の怒ったままなんだよね、怖いよね、誰かの芸風で怒りながら笑うとは違って、笑えない、普通に怖い。


 「今日は春夏、家の用事があってね、でもこの子それが嫌みたいで、逃げ出してしまったのよ」


 と言った。ああ、怒ってるのはそのせいか。


 そして、思うのだけど、この人は僕を知っている。でも僕としては初対面にだよなあ、って、少なくとも『ちゃん』って付けて呼ばれる程も親しくもないし、春夏さんが『お母さん』って言ってなかったら、おそらく僕は彼女に気がつかないと思うくらい他人な認識だ。


 正直、僕のその時の春夏さんのお母さんを見つめる目は疑心暗鬼に満ちていたと思う。


 「いやね、伯母さんよ、秋ちゃん忘れてしまったのかしら? だから秋ちゃんは私にとって甥になるのよ、野に落ちたって思ってる私の妹はそんな事も教えてないのかしら?」


 と言った。


 言ったけど、何を言われているのかわからない。伯母さん??? それに妹??


 「お母さん!」


 僕の疑問が湧き始めて複雑化して吹き出す前に、春夏さんが怒鳴った、びっくりしたよ、本当に、春夏さんの大声を聞くのって珍しい、でも春夏さん、僕が知らないくらいに怒ってる。多分、僕を侮辱したって捉えてのかも。野生とか言ってるし。

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