第77話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 解決編⑦】
こうして、スッと自然に寄り添ってくる椎名さんて、大人系の美人さんで、落ち着いてるから、こっちが慌ててても大人な対応なわけで接してて安心するよね。
基本的に怒らないし。
葉山とかと違ってプリプリしないし、雪華さんと違って無言で攻めてこないし、始めた会った時の彼女とは全くの別人だよね、あのダンジョンの中で放ってた殺意みたいなものとかなくなって、本当に安心感みたいな物も漂ってるから、凄いよね、何が原因なのかわからないけど、人ってこんなに変わるものなんだね。
「最近の椎名さんって、なんか変わったよなあ」
って思わず呟いたら、
「いや、それお館様の影響っす、他人事じゃないっす」
って紺さんが言うけど、一体、なんの事やらの僕だよ。
ん、ちょっと待って、さっきキリカさんなにか言わなかった?
ここで、さっきのキリカさんの発言が、ようやく僕の脳裏に引っかかってるのに気がつく。それを拾って、
「え? キリカさんって、吸血鬼なの?」
と今更のように尋ねると、
「はい、私はハイエイシェントバンパイヤです、ダンジョンウォーカーの皆さんの立場からでは、『バンパイヤロード』と言われ方が一般でしょうか?」
と言って、背後で彼女を見守る様に立ち尽くすフアナさんを見て、そして僕を見て微笑んだ。
「もっと早く紹介しておきたかったのですが、先を急ぎたく、申し訳ございません」
って謝っちゃったよ。
「いいよ、そんなの、でも…」
そうなんだよな、一応はモンスター枠でもやっぱりこんな風に友好的に接してくる人っているんだなあ、ってフアナさんを知る、そして悪魔の花嫁のリリスさんを知る上な僕なのだけれども、改めて感心してしまう。
そんな僕の首のあたりを、ジャージの襟とか引っ張って、じろじろと観察して、葉山が、
「ちょっと、あんた、真壁の血なんて吸ってないでしょうね?」
って確認しまくられる。
「はい、ですから頬に、印を残しました」
とキリカさんが答える。
すると、葉山は僕を見て、なんかとても言い難い表情をして、
「ふーん、デレデレしちゃってさ」
とか言われる、言いがかりをつけられる。してないし。
と、ここでキリカさんのことに触れて、大事な事を思い出した。
「あ、そうだ、雪華さん!」
キリカさんに教えてもらった、ゾンビに対する事後対処方法を伝えないと、って思ってたからさ、すごい考え込んでいる雪華さんに声をかけたんだけど、
「頬にキスする事で、ゾンビ化を防げるとしたら、その処置を施された秋先輩から、私が頬にキスされるのも有効なのかもしれない………、今後の事もある、一度試験的運用のためにもこの行為は積極的に試される必要がある………」
なんか、心、ここにあらずなな感じでブツブツ言ってる。言葉が早いのと、小さいのでよくは聞き取れない。
「ちょっと雪華さん!」
思わず大きな声をかけてしますと、
「あ、はい! でも、心の準備が!」
急にこっち向いてそんな事を言い出す。なんの準備?
「ゾンビの事、この呪い、以外に簡単な方法で解呪できるんだ」
って言ったら、
「あ、はい」
ってなんかションボリしている雪華さんだった。これって、ここにいる目的の一つだった筈だけど、今の僕の発言にガッカリ要素とかあったかな? まあいいや。
そして、僕はキリカさんと一緒に、このゾンビ毛についての処置とか、その対処方法とかを話して、予防策としては、今後はスキンヘッドが最高、ってところで、「また同じような事があったら、スキンヘッドな人達で編成を組むといいかもね。
って話の流れで、
「僕もスキンヘッドになろうかな?」
って、さりげなく、本気とも無く言ったんだけど、瞬時に、
「ダメ!!!!!!」
って、春夏さん、葉山、雪華さん、蒼さん、椎名さん、あんまり髪型とか気にしないんじゃ無いかって思ってた薫子さんまで、速攻で否定された。みんな綺麗に声を揃えて否定された。
「だって簡単そうじゃん、シャンプーとかもいらないし」
って言い返す。
なんで、自分の髪型を決めるのに周りにとやかく言われないといけないんだよ、いいじゃんスキンヘッド、髪の毛とか洗ったり、乾かしたりの手間がとか無いじゃん。楽チンそうじゃん。
って不服そうな顔してると、
「お館様、以外に大変ですぞ、暖簾やカーテンなどに頭皮が接した場合、髪がないので、摩擦係数MAXで頭ごと持って行かれますから、首がもげるような衝撃があります、不意に走ったりが致命傷になりかねません故に、いちいち周りを確認しないと行動もできませぬ」
って意外な苦労が聞けた、そうか、大変なんだなスキンヘッド。




