第75話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 解決編⑤】
「まあ、忍者の嬢ちゃんがゾンビ化していたって事実がすっぽり抜けてますね」
そう、そう、それな、まさにそれ、もっと大きな声で言ってよ角田さん!
「ほら、角田さんが言ってる、ちょっともう一回言ってよ角田さん!」
って言うんだけど、
「角田さんはこっちに居たんだから、関係ないでしょ?」
って葉山、そして以外にも薫子さんが、
「私の主神をそんなことに使わないでくれ、こんな低俗な痴話喧嘩にゼクト神を巻き込まないでほしい」
と断られてしまう。で、そのゼクト様は、
「茉薙、こっち来な、ケロべロスも食さない喧嘩に巻き込まれるぞ」
と茉薙を連れて、吹き飛ばされた五頭さんの方に行ってしまう。
その時、茉薙が、
「いや、俺、雪華を守らないと………」
って言うんだけど、
「間に入ってはいけない戦いというものもありますから、この辺は大丈夫です、物理的に外傷を負うのは君のお兄ちゃんだけですよ」
と一心さんが言う、いや僕、茉薙の兄じゃないし、って言うかその茉薙と一心さん、そしてそれに引き連れられる様に辰野さん行ってしまうんだけど、
「なあ、一心、何がそんなに問題になっているのだ? 私にはさっぱりわからないんだが?」
って言う言葉に、
「ハハ、マー坊も大変だな、あれだよ、あれ、なあ」
って、まるで対岸の火災でも見る様にゲタゲタ笑ってるクソ野郎さんなんだけと、
「あれ、とはなんですか? バカは知る言葉も少なので、説明も拙いのですか?」
とアモンさんが言うと、言われたクソ野郎さんもいぶしげに、
「バカって、流石にひどくないか?」
「我が王にして主人よ、私はその契約の履行の上に、あなた様に『バカ』など言えるはずもございません」
と顔色一つ変えずに言い放つアモンさんだ。
「そうだよな、そうだ、俺が悪かった」
え? 言ったよ、アモンさん、確実にクソ野郎さんにバカって言ったよ。
「その上で、お尋ねしますが、我が王、現状をどの様にお考えですか?」
するとクソ野郎さん、腕組んで「うーん」って考え込んで、
「俺、ネクロマンサー同士の戦いってわかんねーからな、ちっこい方が有利か?」
「そっちじゃねーよ、バカなのかお前は、今、考えてたろ、アホなのか?」
うわ、凄い毒吐いたよアモンさん、流石にクソ野郎さんの顔色も変わって、
「今、お前、なんて?」
「いえ、何も」
「今、バカって言ったよな?」
再び尋ねるクソ野郎さんの顔は、怒っているのではなく、真剣に真面目に、驚愕に捉えられている、って顔している。
「我が王にして主人よ、私はその契約の履行の上に、あなた様に『アホ』など言えるはずもございません」
尋ねられていない方を答えるアモンさんだけど、そんな細かいことどころか発言すらなかったみたいな言い方に、
「だよな、そうだよな、お前がそんな事言うはずないもんな」
って、いつも思うけど、どうしてクソ野郎さん、納得できるんだろう?
「はい、絶えず思って、いえ、確信に至ってはいますが、絶対に口には出しません、我が王よ、ご安心ください」
「そうだよな、わかった」
凄いな、今の一連のアモンさんの発言で納得しちゃったよ。
「まあ、宝は、アモンの苛立ちとか、その原因がどこにもあるのか、全く気がついていないからな、『戦う朴念仁』と言われる訳だよ」
と辰野さんが微笑ましく言うと、
「何言ってるんだ? 俺じゃねえだろ、お前らしぞ、このダンジョンで、お前、『堅守する朴念仁』って言われてるらしいぞ」
クソ野郎さんの言葉に、流石の辰野さんも、仏の様な辰野さんもムッとして、
「何を言っている、私のどこが朴念仁だというのだ、なあ、一心?」
一心さんは、何も言わず、語らず、ただ微笑んでいた。
あはは、朴念仁同士が言い争ってる。って思わず笑ってしまうと、
「人ごとじゃないでしょ、『暴れる朴念仁』」
と葉山が隙間から差し込むみたいに言った。