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第60話 【海の至宝トキシラズ】

 もちろん、持ち帰る時の魚を保存する準備と持って、帰ってからの保管は、鮮魚と同じ様にやらないと、傷んだりするから、その辺については注意が必要で、そこらかしこの壁や柱にギルドの注意喚起の掲示物がされてるよ。


 あと、欲張らないで、的確に食べれる分だけ取って行くのもマナーだよ。


 だから、ここでは食糧確保の名目と、簡単戦闘訓練になるから、飛んでる魚くらいの相手に確実に攻撃を当てないといけないから、結構な訓練になってるらしく、それなりに人気な場所でもあるんだ。

 

 特に魚好きのダンジョンウォーカーにはたまらない魅力を発揮している。


 たまに、ここで捕れる新鮮な魚を目当てに結構、強力な、しかも有名なダンジョンウォーカーも来てるって話もあるんだよね。


 うちの母さんも元はダンジョンウォーカーだからさ、かつてはここでよく魚、じゃなかった、スカイフィッシュを獲って食べてたらしいんだ。


 で、たまにはスーパーで売ってる魚以外の魚を食べたいって、折角ダンジョンに僕が入ってるんだから、ここで獲れる魚が食べたいっていう話になったんだ。


 市場に流通してない魚を食べられるってのも、ダンジョンウォーカーの醍醐味でもあるからね。まあ、普通に釣りが趣味っていう人たちに近いものはある。


 そして、この場所に関して苦手な人も多いんだよね。


 魚が苦手って人もいるし、鮮魚、魚介類の匂いが苦手な人っていて、普通に食卓に上がるくらい、どっかのスーパーで売ってるくらいの量ならいいけど、ここは中央卸売市場とか、水揚げされた漁港くらいの大量の魚介類がいるから、海というか潮の匂いの濃さも、函館クラスなんだよね。


 一方向の海岸から来る、そんな潮の香りじゃなくて、海で挟まれ、三方を囲まれてるくらいには濃い。だから立地的に函館くらかな?


 僕は嫌いじゃ無いけどね。


 潮の香りってさ、どこか生命の根元(根源)の香りって感じがするじゃん。


 でも、苦手な人からすると、ぶっちゃけ『生臭い』になるんだろうなあ、とは思う。


 焼いたり煮たり、お刺身になっちゃったりするとみんな好きなのにね。


 って、いつもならこの辺を解説してくれる角田さんとか妙におとなしいなあ、って思ったら、いつの間にかバットで倒したと思われるバフンウニをこじ開けて、そのまま生で食べてる。なんか、もう夢中になってるから、声をかけるのも申し訳ないって思うよ。


 まあ、そんな話はいいや。


 ともかく、今日は魚を、トキシラズを獲って帰らないと。


 トキシラズって鮭なんだよ。時季とか関係なく北海道近海で取れる鮭。


 漁獲量が少ないから、最近近くのスーパーで見なくて、母さんが食べたいって言い出して、そう言えば最近食べてないな、って僕も思ったから、ここに来てんだよ。まだ出会えてないけど。


 イクラをもってない若い鮭でさ、鮭本来の旨味が、その身に宿って丸々太って脂がのって、魚体も銀色に輝いて、別名『銀鮭』なんて言われてる、そりゃあもう美味しい鮭なんだよ。


 単純な塩焼きとか、あえて素に焼いて、お醤油とか?


 皮のところをなんかをパリパリに焼いてさ、ハラスなんてもう、最高! ご飯のお替りが止まらなくなってお相撲さんになっちゃうくらい食べ続けてしまう。


 でさ、身に乗ってる脂も優しいんだよね、口の中でほろほろ溶ける感じかな。


 ああ、もう、今すぐ食べたいよ。


 僕の家は、サンマとか、このトキシラズとかの良いものが入ると、七輪出すからね。母さんが、じっくりと炭火で焼いてくれるんだ。


 「秋くん、よだれ出てる」


 って、春夏さんがハンケチで拭いてくれる。ありがとう。あの味思い出したらつい。


 本当にあの美味を思い出すと、もう自然にテンション上がるよ。


 ここ最近起きた事なんて、もう、銀鮭という北海道の至宝ともいえる、トキシラズの甘い香しい脂の乗った身をいただけるなら、どうでもいいやって思ってしまえるくらい、海の香に魅了されていたんだよ。


 ともかく探さないと、僕は目をトキシラズを乗せる皿の様にして、周囲を見回したよ。


 やっぱり、食用絡むと、集中力って凄いよね。


 部屋の中心の方、そこに一瞬輝く銀鱗を逃さない僕だったよ。

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