第71話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 解決編①】
キリカさんの案内によって、あっさりと敵の本拠地である『教会』に僕らは難なくたどり着いた。
びっくりした事に待ち伏せもなければ敵らしい残存勢力も皆無で、概ねみんな排除された後みたいだった。まあ、あのメンツだもんな、角田さん一人でも凶悪なのに、似たような戦力が揃ってるから、特に心配も無いな。
で、あっさりその建物の前。
確かに教会っぽいけどちょっと禍々しい感じで、深階層に入ってのすぐの『風の砦』ほどの大きさはないけど、それでもその半分程度、高さなら、こっちの方が高いと言うか、屋上というか屋根の先端に取り付けられている、おかしな形のアンクみたいなものが抜きん出て高くそびえている。あの桃井くんの持ってる杖と同じ蛇を模した形の物だね。
「こちらです」
と言われてキリカさんについては行くんだけど、その辺に拘束されたゾンビが大量に転がってるから歩きずらい事この上ないんだ、踏んだら悪いし、ゾンビ避けが機能してるとはいえ、足とか舐められても気持ち悪いし、自他両面で気を使う。
建物の中に入ると、礼拝堂の様なんだけど、椅子も机もなくて、ガランとした広間があった。そして、その場にみんながいた。
同じくゾンビが転がる大広間の中心でまるで何かを取り囲むみたいない大きな円を作る様に立ってた。
「秋さん、思ったよりも早かったですね」
と角田さん。
「怪我ない? 大丈夫?」
と春夏さん。
「こちらは、もう佳境だ、真壁秋」
と、薫子さん。
「おお、蒼様」
って喜ぶ五頭さんに、
「異常無しです、こちらに被害はありません」
と紺さんが蒼さんに報告してて、
「大丈夫ですか? 多月さん、ゾンビ化していたって言われていたので、心配していました」
と雪華さんが蒼さんの顔をジッと見て言ってた。その横では、
「お前行った方がたくさん待ち伏せしていたって聞いた、俺もそっち行けば良かった」
と茉薙が愚痴るみたいに言った。
「鮫島の方も無事だったみたいだな、ご苦労様」
と辰野さんが言って、その横では一心さんが軽く会釈。
「ご無事で何よりです」
って椎名さんが微笑んでる。
「どうしたの? 顔、テカテカだよ」
って葉山に言われて、そのまま僕の背後にいるキリカさんを発見して、急に怪訝な顔して、
「誰?」
って聞かれる。
まあ、そっちはいいとして、
「全部、終了って感じですか?」
って角田さんに尋ねると、
「いや、俺たちがついた頃にはもうだいたい終わってました、ついさっき、五頭が3人の内の1人のネクロマンサーを倒したところです、他は全部………」
そんな事を言って、その終わらせたであろう人物の方をみると、
「よお、マー坊!」
ってクソ野郎さんが手を振って、その横ではアモンさんがお辞儀してた。
ああ、なんだ、またあの人達が来てくれたんだね。
本当に、修羅場ってるところには必ず現れるよね。クソ野郎さん。
で、そんな人たちが取り囲む、直径で言うところの10mに満たない人の輪の中心に、桃井くんと多分、あれがサーヤさんなのかな? 互いに5歩も満たない距離で立って、そして見つめあっていた。
僕は、そのサーヤさんって人、初めてみるけど、すらっとした美人さんで、桃井くんよりも大分年上っぽい、でも年齢的にダンジョン適正年齢には見えないから、多分、彼女も色々と複雑な理由のあるダンジョンウォーカーではない人なのかもしれない。