第64話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 邂逅編⑤】
あっという間に赤い玉に届く距離。
振り抜いたヒレの攻撃が返っって来る間に一閃。
最近、空気抵抗すらも感じないけど、斬ってるって抵抗も感じないんだよなあ。大丈夫? 斬ってるよね、手応えがないけど、届いている筈。
ああ、大丈夫みたい。剣はその対象物への通過を感じているみたい。
そして、斬られている事にコンマ何秒か遅れて気づいて、僕をそのまま襲って噛み砕こうと姿勢を、大きな口を向けたところで大きな骨のゾンビは、エゾミカサ竜ゾンビはバラバラに崩れ落ちてゆく。
本来の骨に戻った。切り裂かれた骨が床に散乱して。真っ二つになった赤い玉が空中に霧散する様に消えて行った
エゾミカサ竜との戦いが終了した事を知ると、
「さすがです、我が名もなき『地底に横たわる名もなき偉大な白き神』より選ばれし狂わしい王殿下です、比類無きその力は私などが予見するなど無礼と知りました、この身をいかようにも罰しってください」
「助かったぜ! こうもあっさり倒しちまうとわな! すげえ! ほんとすげえ!」
ってキリカさんと鮫島さん、同時に同じ事に感嘆してるんだけど、反応がまるで違ってて、どっちから対応したらいいのか迷う。
ともかく、目的を果たさないとだよ。
このエゾミカサ竜ゾンビを倒して、守っていた扉を開くと、中から鮫島さんの仲間が出てきた。結構な数の人が捕まっていて、その全てを解放した。
みんな鮫島さんの姿を見て、自分たちが助かったって漸く自覚して、ワイワイと喜んでいいる。よかった。
「ありがとうな、俺の仲間を助けてくれて」
と改めて例を言われて、
「良いのか、俺たちも手伝うぞ」
って鮫島さんは言ってくれるんだけど、まあ、僕としては守る人は少ない方がいいかなって思って、キリカさんだけでも道案内できそうだし、決して鮫島さんが邪魔って言っている訳じゃあないけど、これだけの人がいてもみんな仲良く人質になってしまう様では、ちょっと一緒に連れてゆくのは不安。
そろいもそろって深階層の人達だから、弱いって事もないんだろうけど、相対的に考えても、この謎の宗教団体、えーとなんだったっけ、世間、じゃなくて、世辞でもなくて、
こう言う時、意識を読んでさりげなく突っ込んでくれる角田さんってありがたいなあ、って思う、よく考えてみると、聞かれたくない事を口に出してないし、それなりに気を使ってくれてはいるんだよな、って今更気がついた。
で、そのでかい蛇に捕まってしまう人たちなら、抵抗力とかないので、一緒に来ても柔らかい部分だけが大きくなってしまうなあ、と考えていた。
でも、ストレートに言うのも気がひけるなあ、って僕なりに気を使って考えていると、
「すまねえ、これから先は俺たちは行かない方がいいみたいだ、足手纏いになっちまう」
って鮫島さんから進言があった。ちょっとびっくり、ちゃんと自分の能力っていうか、この場合得得手不得手たなんだけど、きちんと把握してるなあ、って感心してしまう。
もっとも、仲間をゾンビにされたらたまらないもんね、この辺は敵の方がいやらしいって考えた方がいいかも。味方を増やしても敵になってしまっては意味がないからね。
「じゃあ、僕は行きますから、ダンジョンお疲れです」
と声をかけると、鮫島さんは、妙に神妙な顔して、
「このゴタゴタが終わったら、また深階層で会ってくれ、礼がしたい」
と言われるけど、安全な道とフアナさんの場所を教えてくれてるから、もう十分なんだけどな、って思って、
「そんな、いいですよ」
っていうけど、
「いや、それじゃあ俺の気が収まらねえ」
って言われて、「いいです」「いや」「本当に大丈夫です」「ダメだ、それじゃ俺の気が済まねえ」って言い合いになって、そろそろ本格的な無限ループに入りそうで、面倒だから、「わかりました」って仕方なく連絡先を交換した。電話番号とメルアドを交換した僕だったよ。