第59話【鮮魚という名のアンデット】
北海道って海産物のイメージあるよね。
ウニとかイクラとか、鮭とか、タラとかね。
今、僕らがいる場所も、そんな場所なんだ。
ここ、ダンジョンでも飛地な場所で、この前、散々な目にあった、『地下狸小路現金掴み取り大戦』のいつもは楽市楽座みたいなダンジョンウォーカーの物物交換やら、フリマみたいになってる『狸の真下』と同じ様に、スライムの森から直接地下4階になってるところで、これもまた同じ様にある場所の真下な位置になってる。
直線的に大通からは距離はあるんだけど、延々と伸びる場所を歩いて進むわけだけど、まあ、そこには、中空の海って言われる、通称、ダンジョン二条市場とか、ダンジョン中央卸売市場ななんて言われる場所があるんだ。
ここ、二条市場の真下らしいんだよ。
二条市場って言ったら、蟹とか売ってる、観光客でいつも賑わってる、観光地としても有名な市場だよね。中央卸売市場もそうだね。
場所も、室内も広くて、スライムの森の半分程度はあるんじゃないかな? いやもうちょっと広いかな?
ともかくそんな感じの部屋。
ただ、違ってるのは、この部屋中に、太い柱がいくつも点在してて、その周りに中途パンパな高さの細い柱もあって、本数はたいしかことなんだけど、形がそれぞれ歪に違ってて、確かに深海の様な薄暗さと、圧迫感はあるね。
この場所にもしっかりと名前はあって、『北海道海北』って名前がついてる。とうか、これ正式なのかな? よくわからないけど、通称みたいな扱いだと思うけど、他にも『北海道海南』『北海道海西』『北海道海東』『北海道海中央(鏡界の海)』があるよ。中央はここと同じ浅階層にあるんだ。他はみんな違う階層だよ。
で、ここ北海道海北は、もちろん海でもないし、水もない。
でも、ここには特定モンスターである、『スカイフィッシュ』が出るんだよ。
これが、ここが『海』って呼ばれる所以でもあるのかな。
スカイフィッシュだから、水の中ではなく空を泳いてる魚なんだ。
そして、どうして、僕がここにいるのかっていうと、母さんに、今日の晩ご飯のオカズを頼まれたからに他ならない。
実は、ここに出る特定モンスターであるスカイフィッシュってさ、モンスターとして出現するものの、普通に魚なんだよね。
魚がダンジョンに? って思うかもだけど、普通に魚。
種類でいうなら『鮮魚』。
普通、種類って言ったら、鮭とか、鱈とか、ドンコとか秋刀魚とかって魚の種類になるって思うけど、この場合鮮魚で、魚種としては、いろんなのがいる。
それも、北海道の近海を泳いでる魚は全部いる。
最近、海流の様子が変わって来て、南限が青森くらいの魚はも入って来てる。
だから、ブリとかスズキもいるし、柱の周辺にはハゼもいる。
後、淡水系も豊富にいる。
支笏湖や洞爺湖でしかお目にかかれない『ヒメマス』もいるんだ。
でもって、それは生きている魚ではくて、端的に言うなら死んだ魚。
だって、ホッケとかは、開いた状態で飛んでるし、ニシンも『身欠きにしん(ニシンの干物)』の状態で飛び回っているものもあるから。
流石に、あの状態では生きてる魚とは言えないから、すぐに死んでる魚ってのはわかるよ。
死んだ魚、ってところでギョ(魚だけにね)って思うかもだけど、普通に売ってる魚はだいたい鮮度の高い死んだ魚だからね。つまり常に僕らの周りにある商品として扱われている魚ってことだよ。
家で調理するのに生きた魚を渡されても困るよね。
普通にお魚屋さんや魚市場やら、スーパーの鮮魚コーナーに並んでる獲れたて新鮮な魚介類が動いて襲って来るのが『スカイフィッシュ』になるんだ。
一応、モンスターの種類としては、『アンデット(アンデッド) 』になるのかなあ?
ヒーラー系の回復でダメージ出せるって聞いてるから、あと、『解呪』も有効らしいけど、それを使える信徒って、こんな浅い階にはいないから滅多に見られないけどね。
一応は攻撃して来るけど、簡単な体当たりくらい。
鋭いヒレのある魚とか、まして毒のある魚、オホーツク海で取れるオオカミウオとか、ましてサメとか危険なものはいない。
後、危険なものはウニくらい? これは近づくと警戒音が鳴るから、その時は足元注視だよ。
基本的には、お魚屋さんに並んでいる物ばかりだよ。キュウリウオ系が多いかな。
適当なダメージを与えると、アンデット(アンデッド) から、普通の鮮魚に戻るから、そうなったら持って帰っても良いんだよ。