第53話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 突撃編②】
ほんと、まあ、いいや。
みんなこんな話をし始めたってことは今後のプランとか出来上がった事だね。
だから、
「で、どうするの?」
と率直に聞いて見た。
「つまり、助けるには順番があるって事ですよ」
と角田さんは言った。
補足して説明してくれるのは葉山だった。
「つまりね、利用価値のある順番で説明すると、一番低いのがフアナちゃん、次にゾンビ化したダンジョンウォーカー、つまりネクロマンサーを倒す事、ゾンビ化解かれることはないけど、根本原因なので、速やかに叩ないと何をして来るか分からないから。おそらく待ち構えているそれなりの数のゾンビとの中に飛び込む事になるわね、そして最後が桃井君、これは多分、世界蛇の他の戦闘員、特にもう1人のフアナさんとの戦いになるわ、つまり世界蛇の本体との戦闘って事」
ん? それは順番って事でいいのかな?
今一、言われている事を理解していない感じの僕に、
「だから、ゾンビってカードはゾンビ化させたダンジョンウォーカーを放った時点て、桃井君にとってはすでに切られたカードとしてもう使用できない、だから今桃井君を抑えているカードはフアナさんって事になるの、だから順を追って助けていかないと、先にフアナさんを助けないと、危ないし、彼女自身が私達にとっての人質になるわ」
と葉山が言った。
そして、
「あ、秋さん、あえて秋さんにとっては嫌な事を言わせてもらいますが」
と前置きしてから、角田さんが僕に告げる。
「フアナはモンスターです、だから通常ダンジョンウォーカーとして我々に助ける義理はないです、つまりこの行程は『助けない』と言う行動により全体の行程の短縮は可能です、戦力を分散することも必要無くなります、桃井を助けるにしろ、影響もでないでしょう、俺らはあくまでゾンビ事件を解決しに来たわけですから、本来で言うならこのゾンビのパンデミックを止める為にも迅速な行動が求められます」
と言った。
もちろん、僕がどんな答えを出すのかすっかり予想してる上でこう言う物言いをするんだよね、角田さん。
「いやいや、僕がフアナさんを助けない訳ないでしょ」
「ですよね」
僕の答えなんて最初からわかってる角田さんは、形ばかりのそんな返事をしてから、ちょっぴり真面目な顔して、
「まあ、これで桃井とあのラミアの関係性や、あの時の状況、そして今回の事件の事なんか聞けそうですからね、秋さんも、その辺スッキリさせたいですよね?」
とか言うから、
「いや、別にいいよ、それは今関係なくない?」
「それらの事が無関係って訳でもないでしょうから、その辺の背後関係とかはいいんですか? きっとこれからにも関わって来る問題ですよ」
「そんなの後でいいよ、ともかく助けないとだよ、友達とその奥さんだからね」
その後でもし桃井君が言いたいなら言えばいいし、言いたくなかったら言わなきゃいいし、僕としてはどっちでもいいよ。
すると、角田さんはちょっと考えて、
「では、同時に行きましょう」
と作戦の立案を始めてくれる。
そんな折に、
「お館様、すいません」
と五頭さんが僕らの後ろから声をかけて来た。
僕の前にいた人は、もう、酸欠の金魚みたいに口をパクパクさせていた。
なに?
って振り向くと、
まず、確認した物を見て、
「うわぁ!」
って声が出てしまう。
「あの、ゾンビ化した世界蛇の戦闘員、いかがいたしましょう?」
って言って来てるんだけど、そのゾンビ化した戦闘員、五頭さんの背後から飛びついている姿勢で、その手は五頭さんのスキンヘッドを鷲掴みして、首筋に噛み付いている。
そんな姿勢を保持したまま、五頭さん普通に僕らに尋ねて来るんだけど、全く感染の気配が無いんだ。
「平気なの五頭さん?」
「はい、どうも私はゾンビにはならない様です」
つまりは、ゾンビ化ってなる人とならない人がいるって事?
さっきも噛まれていたけど、五頭さんには耐性があるって事かな?
そんな僕の横で、雪華さんのエクス・マギナが静かに発動し展開してゆく。
「絶対に何か原因がある筈です」
雪華さんの背後から無数に伸びたマニュピュレーターが五頭さんに伸びて行く。
多分、調査が目的なんだろうけど、どう見てもこの姿って雪華さんが五頭さんを捕食しようとしている姿にしか見えない。
ああ、なんか倒れている何人かゾンビになって立ち上がって来たよ。
「放置はできない、ゾンビ化したダンジョンウォーカーは拘束処置して行こう」
と辰野さんの言葉に皆無言で頷いた。
ひとまずゾンビを倒して、縛って動けなくしたら、また難しい作戦会議になるってことね。
誰かわかりやすく説明してくれるといいんだけど。
そんなことを思いながら、囮になる為に派手に駆け回る僕だった。