第49話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 激闘編②】
なんだ?
って思った時には最接近。その漆黒の黒い鎧とのは程よい『友人距離』に達しようとした瞬間に、鎧が変化した。
ああ、驚くほど簡単に接近を許して、懐に潜り込める様にしていたのはこんな物があったからか。
まるで食虫植物が獲物である虫を取り込もうとするように、無数に伸びた黒い触手が、この場合、虫に当たる僕を取り込むと、接近した僕を包み込むように伸びて来る。もちろん速度は、食虫植物なんて比じゃない。
飛び退こうとしたけど、こっちの方が早い。
「えい」
と僕は、僕を取り込もうと展開する鎧と『恋人距離』、そのまま剣を『斬っていけない』モードのまま、横になぎ払った。
よし、黒い鎧の鮫島さん、思った程重くもなくて、うまい具合に吹っ飛んで、触手から逃れられた。
最近、わかったんだけど、というか葉山が教えてくれたんだけど、この剣って、切れ味を悪くする事が出来るんだよ。もちろんレベルの問題だから、凄い鋭いいつもの状態から、切れ味悪、くらいのレベルまで、こっちの気持ちを忖度して、その切れ味を調整してくれているらしい。
もちろん、切れ味が悪くなる程度だから、春夏さんの化生切包丁の峰打ちよりは斬れてしまう。だから、今みたいにそこそこ頑丈な鎧を来てないと、切断までは行かないけど、骨くらいは残して斬れてしまうから、この切れ味の悪いレベルでも、手加減とか相手を傷つけたく無い戦いにはあまり積極的には使えない。
そして、僕の方も切らない事を絶えず意識しないといけないから、ちょっと気を抜いたら、スパンって行っちゃうから、落ち落ち余計な事も考えられない。
だから、これやる場合、割と緊張を保たないといけないんだよ。まあ、葉山や薫子さんに言わせると、緊張もしないで戦ってる普段の僕はなんなんだよ、って話らしいけど、その辺はそう教育して叩き込んでくれた母さんに聞いてほしい。
漆黒の鎧の人、そのまま派手に吹き飛んで、普通に転がる。僕が与えた物理的な運動エネルギーを回転と摩擦で消耗して止まった。
結構距離空いちゃったな。
もう、向こうから何かして来るつもりは無いみたいだから、大丈夫かな?
ひとまず、傷つけない様にというか大きな怪我させない様には倒したんだけど、って思って、これでいい? って聞こうと思ったら後ろに居たはずのみんないない。ああ、椎名さんと角田さん雪華さんはいるや。
あれ?
って思っていたら、耳元に葉山の声。
「3、2、1…。今!」
僕の真後ろにいた葉山、ブリドの杖を腰から両手に携えて、というかこの場合、構えてだね。普通にライフルみたいに二丁を天井付近に向けたと思ったら、そのままファイヤ!って感じで打ちまくる、というか、ヴァルカ、って言ったけ、まるで小銃の様に掃射して、天井に向かって火を吹く。
一応は杖って話だけど、どう見ても銃火器だよね。
僅かに遅れて次々と悲鳴が、着弾地点からどんどん人が落ちてくる。
その外側を、あ、あれ、この前の茉薙の大剣の破片が飛び回って、同じく天井付近で悲鳴みたいのが聞こえて、こっちも次々と人が落ちて来る。
うわあ、って驚いていると、今度は僕と漆黒の人が戦っていたその奥に、突然巨大な何かが現れる。
ああ、そうか、天井にいた人の誰かがその存在と隠していたんだ。