第46話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 接触編⑥】
雪華さんたちができる人たちで、僕が出来ない人って意味ね。
すると、茉薙が、
「お前、見ても全然わからなかったろ?」
と、小馬鹿にしたような言い方で言って来る。 そして僕からの返事も待たずに、
「だろ? わかんあいよな、俺もわからなかったから、絶対に雪華の言うこと聞いてから動けよ、俺はいつもそうしてる」
って言われる。なんだろう、どうしてドヤ顔なんだろう?、出来ない事に茉薙に仲間意識を持たれてしまう僕だ。
「うちの場合も一心に任せきりだよ、こういう時はできる人間に任せて、私達は黙ってついて言った方がいい、もちろん感謝は忘れてはならない」
って辰野さんも茉薙のそんな話に乗っかって来る。
そんな辰野さんの殊勝な態度に、
「お前、わかってるな!」
って茉薙が子供みたいに喜んで辰野さんに言ってた。
思わず三人して、僕と辰野さんと茉薙で笑っちゃったけど。
うん、なんだろうなあ、まあいいや。
割とのんびり目に僕らは、広い風の砦のあった場所を駆け抜けて、マップに指示されている北側の通路に入った。
ゾンビ達は未だ風の砦の方に大挙しているので、こちらに気がつくのは少数だったので各個に対処はそれほど難しくもなかった。
走っている僕らと、それでも僕らに気がついて、こっちに来ようとするノロノロとした歩みのゾンビ達。
このタイムラグを利用して、もう一回装備を点検、人員点呼。
大丈夫異常無いね、じゃあ、突撃するね。
この北の回廊を抜けて、行き止まりから2手前の階段を降りると、目的な場所な訳だ。
ここから一気に行こう。
って思ってると、割と距離ととって離していたゾンビ達の群れから、一人、ゾンビが抜けてこっちやって来る。
早い、普通に走ってやって来る。
「お館様、私の後ろに」
と紺さんが僕の前に出る。
うわ、走れるゾンビもいるのか、って思って、その駆け寄るゾンビを注視すると、あ! あれ、五頭さんだ。
って思って、やりにくいなあ、顔見知りで、仲間側のゾンビ。って思ってると、
「お館様、紺、私だ、五頭だ!」
って叫んでる。
あれ、そう言えば顔色も緑黒なってないし、動きも快活だし、何より喋ってるし。
「五頭さん、無事だったんですね?」
でも、五頭さん間違いなくゾンビに甘噛みされたたよ、普通に全身を噛み付かれてた。
「五頭さん、噛みつかれましたよね?」
「はい、間違いなく、多分、数十箇所は噛まれていたと思います」
でも、五頭さん、ゾンビ化していない。
このゾンビ化って、人によっては耐性とかあるんだろうか? 麻疹とか水疱瘡みたいに、なんらかの免疫を五頭さんは持っていたってことかな?
ここで一つの例外を初めて見た。
噛まれてもゾンビにならない人がいる。
その相違点を発見しようと、角田さんと雪華さんが話し合いを始めた。いや、今はさ、原因を先に潰そうよ。もう目の前だよ。
って回廊をひた走る僕らの前に、それを待ち構えるように、モンスターが現れた。
いや、ダンジョンウォーカーかな?
漆黒の鎧をまとって、とても禍々しい乱立している、何よりあの右手に持って地に下ろすように携える大剣がなんかやばそう。そして僕らに対しての明らかな敵意を持って対峙している。
この存在が、この先に確実に今回の騒ぎの原因があるって確信できる証拠みたいなものだね、行っちゃダメってことは、行くしか無いって事なんだよね、僕らにとって。
その黒い戦士が携える巨大な剣はゆっくりと持ち上がって、真っ直ぐに僕を指す。
どうやら一騎討ちがお望みらしい。
もちろん、答えない僕じゃあ無いよ。
いよいよ、このゾンビ騒ぎもクライマックス感が押して来た。
ここはサックリと終わらせて、とっととその先に行こうと思う僕だよ。
ゾンビもそうだけどね、僕としてはそれよりもこの問題の渦中にいるであろう桃井くんの方が心配だから、彼が何を抱えて、どんな重い問題でも、なんとかしないとって思ってる。
じゃあ、ここは急がせてもらうよ。