第45話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 接触編⑤】
僕は彼たらに押されるように窓からかかる縄梯子にぶら下がり降りた、ゾンビ達は窓からその悍ましい姿を表すものの、梯子にぶら下がる僕らを確認しつつも、それ以上は追っては来なかった。
って思ったら、縄梯子降りてく僕の横を、壁に普通に立って、
「ふう、間に合いましたね、ゾンビは階段使えてもハシゴは無理っすね」
と言って、
「先に降りて、お館様の降りた先の警戒をしますっすね」
と、壁を普通に歩いて降りて行ってしまう。
スゲー、忍者、ガチな忍者だ。
いや、僕が知らないだけで秋の木葉の人ってこのくらいの事はみんなできるのかもだけど、こういうの目の当たりにすると、ちょっと感動。本物の忍者だよ。
そんな秋の木葉の人達に守られて、事なきを得た、またしても助けられてしまった僕だけど、この人達って本当に僕を守るためには躊躇とかしないんだよ。一応は危なかったら逃げるとかして、とかも言ってるんだけど、この辺についてはなかなか納得してくれない。
そんな僕も、下を見ると、ゾンビ達がゾロゾロとノロノロと集まって来てるんで、縄梯子を放棄して途中で飛び降りて、みんなに合流した。
もう何人かのゾンビは僕らの近くにいる、そして、
「主様、危ない!」
と椎名さんが叫んで、僕の背後に落雷を落とす。
うわ、びっくりした。
ゾンビ達の動きは同一で、皆ノロノロとしているって思っってたけど、それって思い込みで、何人か動きのいい奴もいるみたいで、そんなのに襲いかかれて、思わず反応が遅れた所に椎名さんのフォローが入ったって訳。
倒れているゾンビをちらっと見て、
あれ? このゾンビ何処かで…。
って思ってると、
「あ、九首だ」
と僕の横で同じ視線で、倒れているゾンビを見て紺さんが言う。
ああ、そうか、最近見ないと思ったら、こんな所でゾンビやってたんだ。
あれ? でも、なんだろう? 髪伸びた?
「ありがと、椎名さん」
とお礼を言うと、
「いえ、主人様、それよりお怪我はありませんか?」
椎名さん、自分の放った雷魔法の範囲に僕がいたから心配してくれてるみたい。大丈夫う、ちょっとビックリして、ピリって来たけど平気。
「なんともないよ」
って言ったら、椎名さん、ホッとしていた。
「結局九首、椎名先輩に倒されましたね、因果応報っす、ほんと執念かったから、そのうち誰かがヤキ入れるって言われてましたけど、実家からの勘当、多月からの放逐、最終的にストーカー相手からトドメって感じですね」
って感慨深く言ってから、
「で? ちゃんと息の根止めました?」
って紺さん普通に笑顔で椎名さんに尋ねた。ちょとこの子も言ってる内容とその口調と表情が全く合ってなくて、何処か薄ら寒さを覚えた。
「いいえ、普通に気絶する程度の雷撃よ」
と椎名さんは言った。
「あんなのに手加減でっすか? 椎名先輩って、本当に変わりましたよね、私が聞いてた報告からは全く違います、もしかしたらこれもお館様の影響って奴ですか?」
そんな事を言われて、椎名さん、僕の方をチラッと見て、
「そう、かもしれないわね」
とだけで言った。
そして、そんな言葉をどう受け取ったのか、
「そうっすか、そうなんだ、なら、きっと私も変われるのかもしれないっすね」
って言って笑う、何処も見ていない紺さんの、そんな笑顔が何処かで寂しそうだった。
「真壁くん、いいか?」
と僕に声を掛けるのは、辰野さんだった。
「ひとまず、不殺の対応に感謝する」
と言ってから、
「今、ここで確認しましたが、今、我々を襲って来た方々は、主に『怒羅欣』と『黒の集刃』の者達です、少数、我らの仲間も混ざっているようです」
そんな報告をして来るのは一心さん。そして、薫子さんと雪華さんを見て、
「ギルドのメンツはいましたか?」
と尋ねる。
「いえ、一人もいませんでした」
と雪華さんは言い切った。そして横で薫子さんも頷いている。あ、紺さんも。
すごいなこの人たち、あれだけの数の人からギルドの人間の有無を確認できてるんだ、僕からしたらギルドだって相当数の人間はいる訳で、よく人の顔を覚え無いと言われる僕にとっては神業に近い、もうスキルって言ってもいいんじゃ無いかな、こんな事で彼女達との頭の出来不出来の違いを感じてしまった。