第42話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 接触編②】
なんか本当にすまなそうって言うか、いたたまれない表情で言うから、
「いや、椎名さんも、五頭さんも無事でよかったよ」
一先ず、僕は彼らとの再会を喜んだ。
「主人様」
「お館様」
って二人とも感銘を受けたみたいな、本当に涙目になってるから、ああ、まだ王様スキルの影響が残ってるんだなあ、って、今後はあまり使わないように反省しよう、っていまは考えなくてもいい事を考えちゃったよ。
そんな報告を受けたところで、五頭さんが、紺さんを見て、
「おお、蒼様、無事でしたか」
と喜ぶも、
「すいません、五頭様、私、百目です、紺です、影武者の方です」
と蒼さんではなかなか見れない表情で笑って言った。
「そ、そうか、百目か、そうだったな、すまん」
とガックリと肩を落とした。
そんな、秋の木葉の内情と言うか、やり取りを見ていると、角田さんが、
「相手の方も、強力な魔導師やマッパーがいますね、ほぼこちらの動きは把握されていると思っても差し支えはないでしょう」
するとその話を聞いて、D &Dの辰野さんが、
「砦の中なら大丈夫だ、強力な結界が張ってあるから、中のことまで把握はされないだろう」
「でも、ここにいることは、多分、把握されていると思われます、やはり早急に手を打たないと数で押し切られたらお終いです」
と一心さんが辰野さんと僕に言う。
「これは、最悪ゾンビになった者を倒す事も視野に入れておかないとな」
そうなんだよなあ、ゾンビってダンジョンウォーカーだからさ、基本攻撃は遠慮してしまうんだよ。流石に斬り倒す訳にもいかなくて、ゾンビ化したダンジョンウォーカー加害者なんだけど被害者であって、怪我させたり最悪殺してしまう訳にもいかないって言うのが僕らと言うか、さっきも見た大通公園のギルドの対応というか、僕らがゾンビに対しての対応になる。
もっとも、完全に蘇生ができるって思えば、最悪切り刻むって手も無い事も無いけど、それは最後の手段にしたい。その最後の手段が割と身近に迫っている感はある。
つまり、ここにこうしている現状においても僕らは既にこの深階層の入口に着いた時点で追い詰められている、正に復路のエゾリス(本州ではネズミって言うらしいね)状態で、既に後手に回っているって事だね。
僕はザックリとそんな風に感じた事実を雪華さんに伝えようとすると、その雪華さんは、目の前にモニタみたいな物を数枚展開してブツブツ言っていた。
あ、なんか解析でもしている様な姿に邪魔しちゃ悪かもと思っていると、
「雪華、今、忙しいんだ、邪魔すんな、それにこうなったら、しばらく声かけても返事しないぞ」
と茉薙に教えてもらった。
ああ、そうなんだ、ごめんごめん。
「辰野さん、D &Dの方も被害を?」
葉山が聞いてた。
「ああ、結構深刻な被害を受けている、救われてるのが、ゾンビ化した奴らはスキルを含む戦闘技術の使用などが見られず、あんな感じて、ただ噛み付いてくる程度の攻撃しかしないという事だな、複雑には動けない様だが数が厄介でな、だから、扉も開けられん」
窓から見ると、外にいる結構な数のゾンビは、扉の有無も気がついていなくて、この建物内にいる事には気がついているみたいなんだけど入っても来れずに、壁に向かって進み続けるゾンビとか、周りをウロウロしているだけのゾンビとか、かなり見当違いの事をくり返している。
ゾンビ化すると、そのゾンビ化したダンジョンウォーカーの技能やスキルなんかを使用できなくなるばかりじゃなくて、普通に考える知能も無くなるみたいだ。
したい能力も著しく低下するし、本当の動く屍みたくなるんだなまあ、あれだけの数のダンジョンウォーカーがスキルを使って戦闘技能もそのままに襲ってこられると、そりゃあもう厄介を通り越して、ピンチになりかねない、だからまあ良いのかって考えるけど、いや、むしろ数に任せて噛み付く行為でゾンビ化させて増やして行くだけって言うのも考え方によってはあれだけの数がいると結構厄介だよ。数の上の有利っていより、僕らがこの数で、正面から津波や雪崩に対抗するのに近いくらい、無駄な抵抗な気がする。