第36話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 胎動編⑤】
あれ? ちょっと帰りが遅くない? って感じで、スマホに掛けても出ないし、確かにその行方不明者がいた深階層でも浅い階層から全く動かなくって、しばらく観察したら、最初にシリカさんのマップで確認した、ひどく緩慢に、そしてまるで彷徨う様に、各員が空ぞれランダムな動こを開始、それを見ていたギルドのみんなは、ここで今回の事件が異常であること、自分たちが思うよりも深刻な事態になっていると感じたんだって。
そして、安全の面から結構規模の大きな組織が編成されて、その時点では秋の木葉とクロスクロスに協力を依頼したんだって。秋の木葉なら本当は僕に言うのが筋らしんだけど、最近、ギルドに秋の木葉の人間が諜報の目的で一名優秀なのが入ってたから直接聞いたら、彼女を通して、いずれはお館様の危険に繋がる事なので、と快諾。蒼さんと一部の人が深階層に向かったらしい。
そして、ミイラ取りがミイラに、ってこの場合、ゾンビ取りがゾンビになったって事で、当然普通に音信不通になってしまって、唯一、帰って来た土岐が、しっかりとゾンビ化ししていたって話だ。
雪華さんから聞くと、ダンジョンウォーカーは噛まれるとゾンビ化、そしてダンジョンウォーカー以外の者が噛まれると、あんな風にスギ花粉症アレルギーの様な症状に陥るそうだ。
ちなみにダンジョンウォーカー以外の人には抗ヒスタミン剤が有効だそうだ。
だから、雪華さんは最初は、また病原とか病理を疑って、メディックを使用するも、全く効果がなくて、保険室の主、カズちゃんに言わせると、これは、病気の類ではなくて、恐らく『呪い』の類だそうだ。
もちろん、これは今まで起きた事のない事案で、このゾンビ化する呪いなんて、今までダンジョンの歴史の中でも確認もされていないから、ひとまずの措置をして、各ダンジョンの組織に連絡して、深階層への通路を閉鎖しようかどうしようか検討した時に、ちょっと隙を突いて、さっき4丁目ゲートを出たゾンビ化したダンジョンウォーカーがいつの間にかゲートから外に出て、大騒ぎになったんだって。
深階層で連絡が全くつかなってしまった団体もあるらしいって聞いてから、ちょっと最近知り合いになって人達が心配になってしまう。
もちろん、深階層ともなると、皆さん優秀な人たちばかりだから、僕の心配なんて必要もないだろうけどさ、でも心配。
十中八九、騒ぎの原因いんはあの『世界蛇』の仕業だって。それは間違いないみたい。
一応、雪華さんから一通りは説明を聞いているときに、横にいた真希さんが、
「全く、アッキーが深階層に行く様になった途端これだべさ」
って呟く。
いやいや、僕が何したってのさ? って言おうとしたら、僕の思考を読んだらしい角田さんが、
「いや、秋さん、そろそろ、このダンジョンというか、世界、これらの事件が秋さんを中心に回ってるって自覚した方がいいですよ」
って言われた。
そう言う言われ方って、なんか、このダンジョンで起こる全ての事って、全部僕の所為って聞こえるじゃん。僕が悪いみたいな言い方だよ、って思えて、嫌だなって思ったよ。
まあ、それ以前に、そんなわけないじゃん。




