第33話【ダンジョン・オブ・リビングデッド 胎動編③】
気の毒な、この騒動に巻き込まれて、きっとこの近くのどこかのオフィスビルで働く、サラリーマン風のお兄さん。
見る見るうちに、状態は悪化して行って。その噛まれてしまった人、激しくクシャミして、目とかも真っ赤で、持っていたハンカチとかティッシュで止めどなく溢れる涙と鼻水をぬぐっていた。
「これって、大丈夫なの? なんか深刻そうだけど?」
と思わず、その様子を見て言う僕に、
「あれ、スギ花粉アレルギーと同じ状態だよね?」
と葉山が言う。
ああ、そうなんだ、って、北海道ってスギ花粉症ってあんまりないから、たまに白樺花粉症とかあるくらいで、僕の周りとかいなかったから、よくわからなかった。たまに、季節の変わり目で、本州の方のニュースで見るくらいだからさ、その激しさってのを初めて見た訳だ。
ん?
ゾンビに噛まれてスギ花粉アレルギーっておかしくない?
それでも噛まれた人、すごいクシャミとかしてる。連続で、もう苦しいくらいクシャミ込んでる。その人に、雪華さんは、
「大通り公園を離れて下さい、なるべくダンジョンの入り口付近には近づかなで下さい」
と言って、ギルドの人を2名ほどつけて誘導を開始しして連れて行ってしまう。
気のせいか、その人、そのまま駅前通りをススキの方面に歩いて行くんだけど、距離が離れるほど、落ち着いて行く感じだった。
そして、未だ騒めく大通公園が、なんとかいつもの落ち着きを取り戻した頃、雪華さんは僕の所に来て、深刻そうに言った。
「秋先輩、丁度良かったです、またご協力を仰ごうとしていました、相談があります」と言われて、僕らは雪華さんに誘導されるがままギルドの本部に招かれた。
室内に入るなり、いきなり、
「狂王! 蓮也が!!」
と叫んで僕を掴みかかるは、あの『悪魔の花嫁』さんでリリスさんだった。
僕はそんなリリスさんの顔を見て、雪華さんの顔を見ると、「残念ですか」って言って、一応、保健室の中を見せてもらった。
ちょっとしか見れなかったけど、土岐、完全にゾンビ化してた。
一応、もう一回、確認してみる。
「これはゾンビですか?」
「はい、ゾンビです」
と雪華さんも言ってくれた。
と言うか、そうこの時点では確認して正式ではないけど命名しているらしい。
保健室のベッドに縛り付けられている土岐は、僕の事もわからなくなっていて、黒緑の顔色して、なんか唸ってた。
ヤバイじゃん、土岐、ゾンビじゃん、って、びっくりして駆け寄ろうとすると、カズちゃんに止められて、ちょっと冷静になって保健室を見渡すと、そこにはまだ数人のゾンビ化したダンジョンウォーカーが土岐と同じ様にベッドに拘束されていた。
こんなときにだけど、そんな土岐を見て、あれ? ちょっと土岐、髪伸びた? なんてどうでもいい事をかんがえてる僕はきっとパニックっていたのかもしれない。
今の状態を知る上でって雪華さんに見せてもらったスマホの写真でも確認させてもらったけど、ベッドに縛られている人の他に、シリカさんが作った閉鎖空間に何人かのゾンビが、口にはなんか四角いもの咥えさせられて隔離されている見たい。




