第28話【妹の真の正体、ついでに角田さんの正体】
あの時の事、妹と初めて出会った時の事。それが、アモンさんの口からその名前が出た事で全部繋がったんだ。
そして、妹は僕に言うんだよ。
「すまない、兄、私はお前の本当の妹ではないんだ」
あ、う、うん。ってなる。
何を今さら感があるんだけど、妹にしては珍しいくらいの真剣な面持ちなんで、ここは余計な事を言わないほうが良いだろうって、空気を読んでしまう。
「私は、神殺しにあってな、しかも今までの様な方法では無くて、殺された後に神格を失っていたんだ、そんな時に兄たちに拾われたと言うわけだ」
それって、犯人は絶対に八瀬さんだよね、あの金色宝箱もその為の道具って感じがして来た。本当にあの人、このダンジョンで何をしたいんだろう?
追加で説明してくれたのはアモンさんだった。
「問題は『神格』を奪おうとした者の『器』が小さかった事だ、入りきらない神格は奴の器を壊し、漏れて、今はすっかり、妹ではなくこんな不完全に人間化したブリドに戻ってしまった」
つまり妹は、三柱神、いや、この場合は元三柱神、いや、戻ったっていたららいいのか、ともかく、『贖罪と鏖殺の女神ブリド』がその正体って事なんだ。
その言葉に続ける様に角田さんが言う。
「すいませんね、秋さん、騙すつもりもなかったんですが、俺もまた三柱神の一人だったんです」
と言った。
まあ、角田さんの場合は納得だよなあ、ちょっと人としての規格じゃないもの。
僕はそんな角田さんのどさくさに紛れた様な告白にやっぱりなあ、って思いつつも驚いていた。
角田さんもまた、三柱神なんだと思うと、と言うか消去法で考えると、『全識と災禍の神ゼクス』になる、そうなると、薫子さんやギルドの関連も納得がゆくんだよ。
何より、そんな事実を、角田さんが三柱神の一神であると言う事を否定できない自分がいるのも確かなんだ。コレは理由とか角田さんの性格や性能とかじゃ無くて、それを知る僕がいるんだよ。いや僕は知らないけど、僕が知ってる事を知ってるっていうか、ちょっと自分で考えててどういう意味って思っちゃうけどさ、例えて言うならその事を知っている事を僕が知っているって感じで、今の時点で僕にそんな具体的な記憶なんてないんだけど、僕はこの事実を誰よりも知っている気がするんだ。同時にその記憶もあいつが持っているって確信はある。
あの時、葉山と戦った時に出てきた、幼い僕。
だから本気で驚いてもない僕自身に僕が驚いているって、おかしな感情になる。
いや、そもそも角田さんが三柱神ってことよりも、この人、ってか、神は僕にひっついて何してるんだろ?ってところが一番不思議だった。
すると、その僕のそんな疑問を見通しているみたいにアモンさんが言う。
「まあ、こいつ、ゼクスの場合は神格もろとも木っ端微塵にされたからな、本人はなんとも思っていないと言っているが、そこそこ恨んでいるみたいだから気をつけろよ」
その言葉に瞬時に反応する様に、
「何言ってる、俺はそんな風に思ってなんかないぞ、あれはあれでいいんだよ、これからの事だろ、大事なのは」
って、角田さんめずらしく焦ってと言うか、激しく言っている。
「そんな気持ちはこれっぽっちもないですからね、秋さん」
と何故か僕に念を押してくる。
何はともあれ、ここ、つまり僕の部屋に北海道ダンジョンの神様が全部集まってしまった訳だ。見た目にヤンキー、メガネのガチツンなお姉さん、そして妹と。何より神殿でもなくダンジョンでも無く、僕の部屋って。