第27話【賢王の双斧『破斧グラウコーピス』】
あの見た感、盾に見えたの、あれ、斧だった。と言うか斧みたいに扱ってる武器だった。
簡単に説明すると、直径40センチくらいの円状の刃をそのまま斧のように扱ってる。一応、柄はあるみたいだけど、そのつかを掴んだ手と手首を器用い回して、まるで円状の刃が薫子さんの意識とは無関係に回っているみたいに、くるくるしている。
「うわ、何その武器、薫子、ちょっと趣味悪いよ、どこかの殺人狂みたい」
と音を立てて回る刃を見て、葉山がそんな悪態を付く。
「酷い言い方だな、これでも一応は、このダンジョンにたった一つしかない神器なんだぞ、その目に付けただけありがたいと思って欲しいよ」
となかなか余裕、って表情で薫子さんは葉山に言った。
「そう? 重さと切れ味を回る事で両立させた趣味の悪い武器にしか見えないけどな。強いけど」
と葉山は言う。
「そうだとも、これこそ賢王の双斧『破斧グラウコーピス』だ」
と言った。
ああ、そうなんだ、王様って専用の武器とかあるのね。初めて知ったよ。
それにしても、母さんって、斧の使い方まで知ってるんだな、あんな変な形の斧、多分レクチャーしたのって、母さんで、刃の付いている武器については概ねなんでも使いこなせるから、僕と違って剣だけって事もないんだ。
まあ、僕にしてみれば、武器なんて剣あればOKだよね。
あ、気がついたら、春夏さんも参戦してた。見てるのは、魔法スキルのお二人と僕だけだった。まあ良いか、余裕そうだし。
葉山も負けじと僕と同じ材質の剣、マテリアルソードのショートソードで戦っていた。
こっちは難なく安安とドラゴンニュートの鎧と鱗を切り裂く。 本当にスパスパやってる。なんでも切れてしまう剣だからね。ある意味、この剣の切れ味って、持っている僕から言わせてもらうと反則に近いものがある。
ほんの数分で、敵は片付けられてしまって、葉山も薫子さんもこっちに来る。
「お疲れ」
と声をかけるのは、意外に気を回す、此花妹さんだ。二人の善戦に喜んでるみたい。
「うん、なんかイライラしない、このクラスの前衛は確かに有効かも」
とか言ってた。
そして、僕らはこの後何度か遭遇戦を繰り返して、ようやくその場所に着いた。
概ね、葉山の予定通りの時刻。
後は、この部屋のイベント、つまり、その女神ブリドにどれだけ時間がかかるかが未知数なんだよなあ。
扉がもう、物々しいモノ。シャレじゃなくそう言う印象。
如何に持って感じだもの。
って言うか、これって開くのかな?
って思って手を触れた瞬間、その扉は左右に自動的にゴゴゴって開いてい行く。
そして、室内からは何か、まるで煌々とし光、今まで歩いて来た通とが若干薄暗かったから、部屋からやって来る眩しさに余計にそう感じたんだ。そして物々しいと言うか神々しい曲が響いて来る。
中から声が響く、
「さあ、愚かな挑戦者よ、入って来るがいい」
と声だけ出でくる。
その光に目が慣れて、中の様子がわかるってくる。
ん???? なんだ? これ?
一応、今回の計画を立ててくれた葉山に聞いてみた。
「これ、何?」
すると葉山は、
「わからないよ、私に聞かれても!」
ってわかりやすくパニクった顔でそう言った。
まあ、そうだよね。
「入ろう、秋くん」
と春夏さんがいつものように言う。まあ、こうなるといつもの行動に出ちゃうよね。
「お邪魔します」
と、角田さんが入って行く。
角田さんてこう言う時って意外に常識人でお行儀がいいよなあ、って感じる。本当にそつなくこなしている印象がある。
「なんなの、これ?」
此花椿さんが言うその背中にピッタリと姉の牡丹さんが付いていた。多分、これってこの場所が空間転移か何かを使われているから、離れてはダメって思っての行動だと思う。いや、かもしれない。そんな格好してると改札は一人一人でお願いしますって言われるよ。
「さあ、入ってくるといい」
と声がまた出てくる。
うん、まあ、入るよ。入る。
だって、ここ僕の部屋だもん。
どう言うわけ蒼炎の台座は僕の部屋だった。
あれ?
アモンさんと、クソ野郎さんまでいる。
「よお、マー坊、いつ以来だ?」
って聞いてきてる。
僕からの質問はそこじゃないんだ。どうしてここにあなたがいるか尋ねたい。
そんなもう、不審を絵に書いてしまったような表情をしていると、
「よく来たなって、言ってるだろ、兄、早く入ってくれよ、空間繋げて安定させるのは疲れるんだ」
と妹がキレ気味にそんな事を言った。