第22話【ダンジョン禁止事項 ギルド強制介入】
うわ、弱、本当にこれ深階層の敵なんだろうかってくらいの弱さだよ、耐久だけで言うなら、浅階層で丁度いいくらいだね。
ってそんな風に思っていたら、急に当たりが歪んだ。
あ、立ちくらみ、と言うか悪寒がする。
「秋さん、最近、インフルエンザの予防接種とかしましたか?」
首よ横に振って否定する。
角田さんの質問の声が遠い。耳鳴りまでして来たよ。思わず倒れかかる所をいつの間にかいた春夏さんに支えられる。その春夏さんも顔色が悪い。
「くそ、秋さんが発病したか」
って角田さんに言われて、ああ、前後のつながりといまの体調を鑑みて、これインフルエンザの症状かって、思った。うわ、吐き気もしてる。
そう思っていたら、葉山が「お腹痛い」って言って倒れた。
「葉山!」
どうやら葉山は風邪引くとお腹に来るタイプらしい。
「こりゃあ、ちょっとヤバいですね、ここで全滅もありえますよ」
と角田さんの冷静な声に、自分の体調、みんなの様子、そしてこの吹雪かよってくらいの『病塊』の舞い飛ぶ数。確かにありえるかも。と言うか、僕らに抵抗の手が残っていない。
でも、あれ? 桃井くんは平気みたい。と言うかこの攻撃に抵抗力があるみたいな感じだ。
そして床に膝をついて今にも倒れそうになる僕を見て悲しそうに言う。
「ごめんなさい、秋様、僕…」
ん? どうしたんだろ? 桃井くん、いつもの様子じゃないなあ、って、僕もこんな状態だけど、ちょっと気になってしまう。
あんまりいつもの桃井くんらしくなかったからさ、『どうしたの?』って、その事を訪ねそうになった時に、僕らを中心い左右から大量の足音が聞こえて来る。結構な大量な人達だ。本当にそれどころじゃないね。うわ、これ完全に終わったね。
「何重にも張り巡らされた罠ってことね、完全にしてやられたわ」
そう椿さんが言う、彼女も体調が相当悪そう。でも自身に呆れているみたいに笑ってる。
九首さんで油断させて、座標を固定する為にの足止め、そしてこの病塊で完全に戦力を奪って、最後にトドメが来た訳だ。
クッソ、触れれば消えてしまう様な存在なのに、これだけ大量になって、しかも魔法が通用しないなんてもしかしたら最悪な敵かも、って流石に僕も今回ばかかりは覚悟した。
ほら、後ろからも足音が聞こえて来た。これも結構大量。多分、人数にして20人くらいかなあ、魔法が効かない。で、触れるとこうしてインフルエンザとか感染、瞬時に発病、重篤化するんじゃ文字通り手も足も出ないよ。
あ、でも魔法が効かないなら……、
「角田さん、転移魔法とか使えない?」
「ええ、俺も今それを使おうと思ってました、適当に対象物を指定しても『病塊』は対象外になりますからね、ちょっと乱暴だが、まあ行けると思います」
くそ、一回出直しだ。
って思ったんだけど、
「大丈夫、助けがきたよ秋くん」
って僕を支えてる春夏さんが言うんだよ。
そしてこの言葉通りになった。
僕のよく知ってる声が僕の後ろの集団から響いった。
「ギルドです! この地域における全ての戦闘の中止を願います」
ああ、ちょっと聞いた事のない種類の声を出してるけど、僕にとっては身内で安心する声だ。そしてその声は、まるでこの空間を支配し律する様に響く。すごいな、この知った声、雪華さんだ。