第21話【病塊〈シック・マズ〉】
僕が、桃井くんの事を気にかけていると、薫子さんと椿さんが、真剣な口調で話し合ってた。
「前回のシンメトリーさんからの連続性を考えるなら、それなりに調べないといけないからな、一応、全員を頼めるか?」
「OK」
って軽く返事して、薫子さんがギルドに連絡した後、本当に全員イジェクトした。スライムの森、ギルド本部前に送っていた。
「全く、私の前で牡丹をdisってタダで済む訳ないじゃん」
って言ってから、
「あ、牡丹は私だった、ごめん、間違えた、今の無しだから」
って僕にちゃんと伝えてくれた。
「うん」
って言葉短めに返事したら、椿さん、安心してた様に微笑んでいた。いいんだ、それで。
まあ、こういう一つの事に熱心に研究する学者タイプの人って変わった人が多いからなあ、本人が気が済んでいるなら何よりの僕なんだけど、そろそろみんなツッコむ人出て来そうで、ちょっとその辺を注意と言うか警戒するのがまどろっこしい。もう椿さんでいいじゃん、って言い出しそう。
でも、今回僕らを襲って来た人達、この人達をそそのかして、一体に何をしたかったのだろう? 彼等を利用するにしても、僕等に対してあの戦力じゃ、足止めにもならない筈だし、そう思った時だった、足元が揺れた。
「ああ、そうか、なるほど、俺たちの座標を固定する為か」
と角田さんが言った。
「どういこと?」
「つまり、ほんの数秒、俺たちが止まっていれが良かったんです、それでテレポートの座標に、このパーティーを指定できる、つまりこれが本番ですよ」
ちょうど僕の足元にゲートが開かれる。
思わず飛びのこうとするが、他にもみんなの足元に次々とゲートが現れる。
「うわ、なんだこれ!」
「出ます!」
多分数は僕らの人数分、その数のゲート、つまりテレポートの出口が現れて、そこから、紫色の、そうだね、まるで『種』みたいな小さな粒が、吹き出す様に出て来ると、その一つ一つがポンポン弾け、大きさで言うとバスケットボールくらいの玉? くらいの大きさになる。それがあっという間に空間を埋め尽くした。
僕としては、もっとすごいエルダーとか、エイシェントとかのモンスターが出てくるって思ってたから、ちょと拍子抜け。全くたいした事ない、攻撃力も害意とかも感じられない。この紫色のふわふわした物体って、なんかもう物に近い。
でも角田さんは違う。
「みんな、これに触れるな!」
って叫ぶんだけど、無理だよ、だって、ちょっとこの紫色の玉の数、尋常じゃない、この空間を埋め尽くす勢いだ。しかも玉は次々と種?みたいな物を蒔いて、それが全部、紫色のバスケットボール大になる。つまり増える。
それに既に数回は当たってしまったと言うか触れてしまった僕だけど、全くダメージとかも無いんだ。
「角田! これ『病塊』?」
と椿さんが聞いた。
「ああ、そうだ」
「ありえないくない? 普通はこいつら特定室内固定でしょ? 突然、いきなり、こんなに大量に?」
「こいつら、接触と仲間を増やすしかできないからな、まだ増えるぞ」
って角田さんがまた叫んだ。
「魔法でなんとかならないの?」
これは僕ね。
「この『病塊』って魔法が全く効かないのよ、私、もう触っちゃったから、手遅れだから、ほら」
って言って指先で触れると、その『病塊』と言われるバスケットボールは。まるでパチンと弾ける様に消えた。僕もそれに倣ってみる。
ホントだ触れた瞬間に弾けて消えた。シャボン玉かよってくらいのか弱さだよ。