第17話【再び『碧き爆炎』目指して出発!】
もちろん、此花さんの妹だから、彼女並みの戦力が加わるのって是非もないんだけどさ、何か、こう、複雑なというか面倒な物を内包してしまった気もするけど、此花さんには助けられてるしなあ、まあ良いや。
ちょっと納得しかねるけど一応は席に戻ると、
「や、やあ、真壁っち、遅かったな」
って言われた。真壁っちって…。
多分、色々と此花姉の方に仕込まれているんだなあ、ってこの時点で思った。
そんな顔をしていると、
「え? いつもはこんな感じじゃなかったっけ? そう聞いていたんだけど…」
って不安に彩られた顔で此花妹さんは言ってくる。聞いたとか言ってる。多分、この人、自分て言ってることってそれほど警戒してないっていうか発言を気にしてないなあ。
「え、ああ、そう、うん、そうだね、大丈夫、いつもの此花さんだね」
って言ったら、妹さんの顔色はパアって明るくなって、
「そうか、よかった、大丈夫だな、私は此花牡丹だからな」
って言ってた。念を押された。もうこの時点でボロボロだよ。
「なんで、椿さんが牡丹さんを名乗ってるのよ?」
って葉山に尋ねられる。
「なんか色々と事情があるんだよ」
「ふーん」
なんかジト目な葉山だよ。
「仲良いんだね」
って言う葉山の視線が痛い。
最近さ、僕に対して、特に女子絡みの時に僕に当たる感じが、春夏さんはなくなって来たんだけど、代わりに葉山がうるさい。もう、面倒くさい。
「秋さまはモテモテですからね」
って、桃井くんも余計な事言わない、あ、フアナさんの件、聞き忘れてた。
「まあ、新進気鋭の魔導師様がいるのは良い事ですよ、よろしくなお嬢ちゃん」
と角田さんが言うと、
「さすがに余裕ね、大賢者角田涼、私と牡丹なら、あなたにだって負けないんだからね」
と言った。言っちゃった。自分と牡丹って言うなら、じゃあ君は誰なんだよって話だけど、みんなその辺は早速察してスルーしてくれた。角田さん自身に対して挑発的な言葉だと思うんだけど、こういう所って大人なんだよなあ。この魔法番長、僕に対してもそのくらいの寛容さを示してもらいたいモンだよ。
なんか、余計な物もひっついて来たけど、多分、今回のクエストには問題は無いと思う。寧ろ大きな戦力だから、心強いよ。
「じゃあ、出発するよ」
そう言って僕は席を立つ。
みんなはそれに合わせて、立ち上がった。
そして、此花妹さんは言う。
「じゃあ、よろしくね、真壁ぴー」
すっかり安心した笑顔な此花椿さんだった。
真壁ぴーって…。
「あれ? 違う? いつもはそう呼んでいるって、牡丹が…」
一体、幾つ呼び名があるんだよ、でどれだけ仕込まれてるんだよ。
「うん、そうだね、そうだよ大丈夫大丈夫」
と言うと、此花椿さんは本当に輝くような笑顔になった。うわ、眩しい、この子も光放つ系の美少女だって事、忘れてた。
戦闘能力とか全くの不安はないけど、強化された感じだけど、色々と不安だよ。
何はともかく出発、みんな、切羽詰まったとき以外は特に此花さんの事はスルーの方向でね。
ともかく、『碧き爆炎の台座』に向けて出発。
そんな僕の耳に、明らかに空耳ではないあの笑いを堪える声が聞こえた。
よかった、色々と助けられている此花牡丹さん、楽しんでもらえて何よりだよ。