第13話【今、深階層での一番ホットな話題】
北海道ダンジョンも、深階層にもなると、規模が大きくなるから、長くダンジョンに潜っていられるように、こうして宿屋とかコンビニなんかもあるんだね。
「ここが1回目の休憩ポイントだね、ここで大休止して、よく寝て、次の日の午前中に目的地に着くように行程組んだからね、もう予約して部屋分けもしてるから」
流石、葉山だね、手回しが良いよ、こういう時って本当に頼りになる。
「一応、2部屋取ったから、スイートが私と真壁、あと他のみんなは大部屋で一緒に寝てね」
前言撤回。何言ってるんだこの子。
そんな葉山の腕をグイッと薫子さんが掴む。
「すまない、女子でスイートを使わせてもらう、男子の方は大部屋に行ってくれ」
まあ、そうなるよね。
「ちょっと、薫子、勝手なこと言わないでよ、何よやっぱり邪魔しに来たんじゃ無い」
「ああ、この件に関していえばそうだ、邪魔する、誰がお前と真壁秋を2人っきりにするものか」
と以前とは比べものにならないくらいの強い覚悟みたいな物を持って薫子さんは言った。
すると、今度は桃井くんが、
「そうですよ、本来ならここは正妻である春夏様が秋様と一緒にスイートに行くべきです、第三夫人である静流様はまず正妻である春夏様に許可をいただかないと」
ってしたり顔で言っている。君の言っている事もおかしいから、春夏さんもモジモジしてないで、ちゃんと否定しないと、ドヤ顔だよ桃井くん、本当に余裕だな、このちびっ子既婚者め。
あの後、フアナさん、ラミアさんね、それを妻って紹介されてそのままスルーしている僕だけど、聞きたい事は山のようにあるからね、この際、時間もあるだろうし、修学旅行の男子部屋で恋バナ咲かすように、この宿泊施設で膝付き合わせてじっくりと聞かせてもらおうかって思っている僕だよ。
「秋さん、王様ですからね、多分にそういうこともあるでしょう、俺は先に大部屋行ってますから、ゆっくりどうぞ」
って角田さんは完全に我感せずって感じだよ、ここは年長者として突っ込んでよ。
お年寄りらしく『男女七歳にして席を同じうせず』とか言ってよ。
「おや、ここのセイコーマート、ホットシェフあるみたいですよ秋さん、晩御飯は温玉豚丼にしますか?」
とか聞いてくる。
確かに宿屋の方には買ったお弁当とかを食べる飲食ブースとかもあるね。良いかもね。
春夏さんはそんな僕らにニコニコして、
「じゃあ、秋くん一回荷物置きに行くね」
そんな春夏さんに連れ立って蒼さんも行ってしまう。
そして、僕らが何を食べようかと、物色している間に女子たちが帰って来て、みんなでワイワイとご飯を食べていた。そして、今回、このお店とか初めて来たって話したら、ドリンク一杯サービスしてもらった。
なんだろう、ここはお酒とかは無いんだけど、まるでファンタジーの世界で言うところの冒険者のお店みたいで、知らない人達ともワイワイとやれた。
ちなみにダンジョンにはお酒の持ち込み禁止だから、そして禁煙だから、噂に寄ると、お酒を飲む系のモンスターとかタバコとか葉巻とか煙を吸いたいモンスターも、深夜の大通公園の一角でその欲求を果たしているなんて噂もあるよ。
ともかくお酒もタバコも基本、ダンジョンには持ち込み禁止なんだよ。この辺はギルドも目を光らせていて飲ませない吸わせない持ち込ませないを徹底している。
だから、ここに集まる冒険者もスナックやらお弁当やおにぎりとソフトドリンクで健全に盛り上がっているって訳なんだ。
そして、いろんな情報がやり取りされていた。
一番聞いたのが、あの『狂王がいよいよ深階層にやって来る』みたいな話だった。ごめん、もうやって来ている。言わないけど、一緒に『へー』とか言ってるけど。