第12話【宿屋に到着(ホットシェフ付)】
角田さんと桃井くんの散々の言われ様に、ちょっと傷つく僕。
そんな事ないもん、って強がってみていたら、葉山がさ、そんなことを、僕が泣きべそかいてるみたいなことを言うんだゃよ、
春夏さんは僕に合わせて歩いてるから、結構間延びした隊列になってる。え? 僕涙目? その距離から葉山は見えるんだ。気をつけよう、で、慌てて追いつく。
「どうしたの? お腹痛い?」
と、心配して葉山。
「お前、牛乳飲んだろ? 量を飲むならあれほどローファットにしろと今日花様に言われていただろ?」
これは呆れるように薫子さん。
言われてるけど、確かに乳製品にお腹弱いけど、飲んでないし、いいから的外れな心配しなくていいから、あんた達親戚のおばさんかよ。
ちょっとみんな油断しすぎだよ、もっと警戒しようよ。
もっとも角田さんの話によると、この辺はそれほど強い敵もいないし、それほど心配していないけど。通路だから敵も罠もないけど。
それよりも、ちょっとこれからの事を考えよう。ちょっと悲しい気持ちを避けておこうと思った。
チトセ商会の小々島さんの話をまとめると、そこを管理する、三柱神の1人、贖罪と鏖殺の女神『ブリド』に認められると、その女神様が女神由来の武器をくれるらしい。
認められるって、こういう時と場所と目的で行くと絶対に戦うって事だよね。セオリー無しに巨人を倒したり、エルダーさんとかエイシェントさんとかとも対峙はしている僕だけど、それよりも上位な三柱神さんの一柱といよいよの対峙になるのかあ、と今考えても仕方ない事を考えたりしている。
深階層に入って早速神様と戦うのかなあ、って思ってちょっとゲショる僕なんだけど、まあその辺は葉山の為にも頑張ろうと思う。
それに、ダンジョンの中で数泊するっていうのも初めての体験なんだけど、一応はお弁当とかは持たされているんだけど、入って早々に角田さんと桃井くんに食べられてしまって、今は食べ物って何もないんだよ。それにしても、角田さんと桃井くんがあんなにオニギリ好きとは思わなかった。具だって普通にイクラの醤油漬けとかだよ、松前漬けもあったけど。
「いや、今時、手で握ったおにぎりなんてちょっと希少ですからね、止まりませんでした」
と角田さん、桃井くんに至っては、
「『ふっくりんこ』ですね、このお米、『ふっくりんこ』です」
ってその小さな体に見合わない勢いで食べてたよ、もう、米マイスターかよ、って感じで、
「そもそも最近の北海道米については既に、昔からあった米所を凌ぐ勢いでして、もちろんコシヒカリやササニシキを否定するものでは無い僕ですけど、そのブランド米に勝るとも劣らないのが、最近の北海道のお米事情です」
って食べるのか、話すのかどっちかにしたら、って言いたくなくほど熱く語ってくれる桃井くんだった。
まあそんな訳で、僕の持っている荷物と言ったらもう水筒に入ってる水くらいのものです、それも半分くらいは2人に飲まれてしまっていた。ほんと、この2人って、荷物とか無いんだよ、装備以外はもう手ぶらでダンジョンに挑んでいるんだよ。
「まあ、コンビニも宿もありますからね」
って角田さんが言うんだけど、そんなの一体どこにも、って思っていたら、
「ここに」
って指差す部屋の扉に『INN』と言う文字と『セイコーマート』の看板がついてた、しかも24Hだって。