第11話【あれ? もしかして強気なボッチ集団?】
まあ、救われているのは、葉山と薫子さんて割と仲が良くて、人付き合いが苦手というか、ちょっと近寄りがたい印象がある部下はいても友達はいないって言われている薫子さんが、この親友宣言ができたのってお互いによかった事だと思う。
葉山だってまんざらじゃ無いよ。
ほら、結局本音ベースでしか言い返せない葉山だよ。
「大きなお世話だよ、私は真壁と2人っきりが良かった」
「いや、それは無理だろ、私がいたところで何も変わらないんだから、八つ当たりはやめてくれ」
「八つ当たりなんてしてないよ、薫子にしか当たって無いよ」
「余計に悪いだろ、いや、ありか? これは親友として受けるべきなのだな、いいぞ、もっと当たって来い、葉山静流、私に八つ当たって来るがいい」
「もー、や、そう言う趣味なの? 喜んじゃう人なの?」
「いや、違うが、そうしたいならするといい」
「嫌だよ」
「わかっている」
「もう、やめてよ!」
「ああ、そうしたいならそうするといい」
平行線で言い合ってる。どこにも交差する部分が無いけど言い合ってる。
最近の家にいる時も言い合ってるんだよね、なんだかんだでほんと仲良しさんだ。
僕も前衛なんだけど、あの2人、互いに言い合いをしてながら、どんどん前に進んで行く。
最初に2トップで、葉山と僕って言ってたのは葉山自身なんだけどなあ、まあ、いいけど、その後を僕と春夏さんで控えの前衛として付いて行ってる形になる。
そんな喧々囂々な2人を春夏さん、ちょっと羨ましそうに見てる。仲間に入りたいんだろうか? よく考えてみると春夏さんも、友達っていないよね。
ん?
ちょっと気がついた。だから思わずみんなの顔を見てしまった。
そう言えば、ここにいるみんなって、友達とかいないよね。いや、このパーティーは友達と言えば言えない事も無いけど、あえてダンジョンだから、ダンジョンウォーカーとして枠から外して考えると、なんかここ、『ぼっち』の寄り集まりに見えてきた。僕以外みんな天上天下唯我独尊みたいな人ばっかだもの。
今更だけど、ちょっとヤバい人の集団かもしれないって思ったら、身震いしちゃった。
「秋くん、寒いの?」
って春夏さんに心配されてしまった。大丈夫、ちょっと心がね、一瞬、真冬の隙間風が吹いただけだから、もうなんか凍えそうだよ。
すると、僕らの後ろから声がかかる。すぐ後ろには蒼さんがいるけど、そのさらに後ろから、
「いや、秋様もその枠の中にいるんですよ、と言うかトップオブトップですよ、さらにその高みにいるんですよ」
って桃井くんに真剣な顔して言われた。またこの子、僕の思考を勝手に読んだみたい。
そして、今度は角田さんが、
「桃井、そう言うことを言うんじゃ無い、人はあえて気がついていない事で心に平穏を保てる事もあるんだ、自身を顧みれない所も秋さんのいい所なんだぞ、余計な事を言って、お前が秋さんをスポイルしてどうする、あ、気にしないでくださいね秋さん」
と、角田さんは桃井くんを叱ってくれて、桃井くんも、「あ、そうか。ごめんなさい秋様」とか言ってるけど、なんか侮辱されているよね、普通より丁寧に深く抉るように蔑まれてるよね?
くそ、覚えてろよ。
「真壁、ちゃんとついて来てよ、あれ?なんで涙目?」
っていつの間にか、前衛の葉山達がこっち来て僕を覗き込んで言うんだよね。
泣いて無いから、顔とか覗き込むなよ、って思っちゃったよ。