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第5話【ロード辰野さんに、サムライの一心さん】

 やたらと一心さんの肩を持つ葉山に、責められる辰野さん。何より、辰野さんの中には『何かいけない事をしたんだろうか?』って一瞬の陰りがさしているのが分かる。もっと軽いかな、あれ? 何か間違った? くらいの気持ちが生まれているのが見た目にわかる。そこを見逃す葉山ではなかった。


 「そんな事言われたら、女の子は傷つくんですよ」


 「いや、私もそうは思っては無い、一心が裏切るなんて思ってはいないよ」


 「でも聞いたんでしょ? まさか裏切ってないよな? みたいに聞いたんでしょ?」


 と葉山は、完全に一心さん側に付いて擁護と弁護を開始する。


 これも後で葉山から聞いた話なんだけど、一心さんって、戦闘能力とかサムライとかって前に、このD &Dの中にいて、色々と他の団体とか個人にも気を使ってくれる人らしいのだ。


 以前、やり過ぎた葉山が深階層のダンジョンウォーカー達と対立しかけた時も、それとなく間に入って、納めてくれる気遣いの人らしい。


 だから、葉山としても、一心さんを頼る事って多くて、そんな時も嫌な顔一つしないで対応してもらっていたんだって。まあ、一般に言う所の『恩人』みたいな人に当たるって事で、その恩人に対してのこの仕打ちに葉山は真剣に怒っているみたい。


 「謝って、一心さんにちゃんと謝って」


 と辰野に詰め寄っている葉山だ。


 「そうか、すまなかったな、一心、私も驚いてしまって、君を傷つけるつもりはなかったんだ」


 とはきちんと一心さんに向き合って謝罪している辰野さんだった。


 「やめて下さい、私がここにいるのは私の『欲』以外の何物でも無いのですから、そう疑念を持つのは組織の長として当然のことです」


 と一心さんは言うんだけど、そんな様子を見ながら、「本当か? それなら良いが、私は、君には頼りっぱなしだからな、なら良いんだ、しかし、嫌な思いをさせてしまったかも知れないと言う事をきちんと謝らせてほしい」


 と頭を下げた。


 なんだろう、この辰野さんってとてもいい人そうだ。あまりにいい人すぎて、僕の周りにはいなかったタイプだから接し方がわからない。


 葉山に言わせると、一心さんが蒼さんが現れた当時から黒の猟団にいないでD &Dにいて、微妙な立場を維持しながらも辰野さんに寄り添っている事を考えれば、裏切っているかどうかなんてことよりも、もっと大切な事がわかる筈だって、プンスカしている「もっと怒って良いんだよ」とか一心さんに言っている。


 そんな忠告をしている葉山は、本当に一心さんに寄り添っているんだなあ、と、蒼さんと言いつつ、春夏さんと言い、みんな割と深階層に所縁のあるんだなあ、と思うと言うか感心していた。まあ、蒼さんと葉山の場合は元々が深階層の人達だもんなあ、と改めて思い知る僕だった。


 そんな僕に、辰野さんが近づいて来て耳打ちする。


 「で、どうだったんだい?」


 ???


 って顔していると。


 「例の隠しルート、行ったんだろ? クロスクロスの土岐蓮也から聞いているよ」


 って言われる。


 そういえば、土岐の奴、いろんな人に聴きまくってるから僕が、あの『おっぱいロード』に挑戦したのは公の事実になっている様だった。隠しても仕方ないので、


 「あ、はい、行きました」


 と素直に応じる僕だ。


 「最後の部屋にはたどり着けたのかい?」


 「はい」


 「誰かいたんだい?」


 「春夏さんがいました」


 すると、辰野さんだ少し考え込んで、


 「そうか、今回の場合は一応、共通点があるなあ」


 と言った。そして、


 「私の時は、そこにいる一心がいたんだよ」


 ああ、そうかこの人もかつては挑戦したんだな、って思うとなんか親近感を感じてしまう。何か身内って思ってしまう僕がいる。


 それにしても一心さんと春夏さんの共通点ってなんだ??


 「ほら、二人ともこのダンジョンでは稀少な『サムライ』だろ? つまり、サムライが出るってことじゃ無いかな」


 へー、そうなんだって納得しかけるも、辰野さんは腕を組んで唸る。


 また考え込んで、「いや待てよ」とか言って、


 「確か、宝の時はアモンがいたって言っていたから、この場合は違うなあ」


 とか言っていた。そうなんだ、クソ野郎さんも挑戦してたんだね。まあ、あの人ならって思う僕だよ。


 「鮫島達は誰も何も無かったと言っていたなあ」


 一頻り考えて、


 「うん、まあ良い、仕組みとかはまた考えよう、いまは史実だけそ記録しておこう」


 と言って、辰野さんは、


 「あ、私はこの北海道ダンジョンの『史実』を記録しているんだ、もちろん君の事も書いているよ」


 そうなんだ、北海道ダンジョンの歴史を綴ってるんだなあ、って感心した。


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