第4話【深階層トップの組織 D &D】
まさに一心不乱に春夏さんと剣を合わせているその一心さん、急に春夏さんに、「ごめん春夏姉さん、ちょっと待ってください」
と言ってから、ツカツカとこちらに向かってくる。
目的は僕ではなくて、その横にいつの間にか姿を表した多月蒼さんだった。今日も忍んで付いて来てくれてたみたい。
「蒼ちゃん!」
「浅葱ちゃん!」
二人は手を手に取り合ってクルクル回り始める。
凄い仲良しみたい。
後で蒼さんに聞いたんだけど、この二人って、殆どの姉妹みたいに育てられたんだって。蒼さんが本家で、この一心さんて分家の筆頭で、ほとんど第二の本家みたいな扱いになってって、家も隣で、同い歳ってのもあって、本当に仲良しみたい。
でもダンジョンに入ってからは別れてしまって、色々あって一心さんはD &Dに、蒼さんは黒の猟団を作った見たいな話をしてくれた。
それでも、結局は多月の家の人な一心さんは、秋の木葉には参加していて、ここに今日僕がこうして来る事も、この辰野さんに前以て言っていてくれたり色々有利になるように働きかけてくれたみたい。だから、僕を見る目も優しい。
「一心浅葱です、お屋形様、深階層への到達おめでとうございます、ならびによろしくお願いいたします」
とスッと頭を下る。
ちょっとその立ち居振る舞いが、その所作がすごく綺麗な人で、ビックリする僕なんだけど、そこは、
「またお会いできてうれしいです、頭、上げて下さい、いつも蒼さんたちにはお世話になっています」
と、自分でも大人な挨拶をしてしまう、この一心浅葱さん、大人な感じな女性だった。多分、秋の木葉の方に秋の木葉の事情とかあって、これが当たり前な事なんだろうけど、僕にとっては初見同様なサムライさんて深階層の有名組織の人だから、彼女が僕を知っていたにしても、僕の方としては恐縮してしまう。
そんな僕の元に、
「秋くん」
と春夏さんも来た。
「申し訳ありません、お借りしていた東雲春夏をお返しします」
と浅葱さんは言う。
「知り合いなんだね」
尋ねると、
「うん、一心と東雲は特に私の家は昔から繋がりが深いの、東雲の一部が多月にいるみたいで、今もやり取りはあるんだよ」
と言った。
そうなんだ、ちょっと複雑なんだね。それ以上は関係なさそうだから、仲良しって事でまとめておく僕だった。
「互いに行ったき来たりで、血を混ぜ合わせて二つの家は混在しています、『心をどこにおいても一つ』と言うのが家訓ですが、この様な事情な故、あまり信用されません、安心して下さい私は誰も裏切りませんので」
と言った。
すると、辰野さんは、
「そうなんだよ、私も、この一心が君の持つ戦闘集団『秋の木葉』って聞いた時は流石に、直接本人に、裏切ってしまっているのか?って聞いてしまったくらいだよ」
と笑って言った。
すると、その言葉に瞬時に反応したのは葉山だった。ちょっと顔色変わってた。
「え? 一心さん、そんな事を辰野さんに言われたの?」
って聞いてた。どうも葉山と一心さんもそれなりに知り合いというか仲良しみたい。
すると、一心さんは、
「過ぎた事ですので」
と言うに止まる。
しかし、葉山の攻勢は止まらなかった。
「辰野さん、一心さんにそんな事を言ったんですか?」
と食ってかかってた。
「あ、ああ」
とこれにはD &Dのリーダーもタジタジになっているのが分かる。凄いな、多分、この辰野さんって、結構強いし、多分精神も強い人だけど、そこに有るか無いか分からないくらいの隙を突かれたみたいになってる。