第3話【風の砦レラガルド】
その広大とも言える室内に、岩と石で出来た砦がある。あ、セイコーマートの看板があった。あれが葉山の言っていた、深階層で一番大きな諸点『レラガルド 』なんだなって思っていると、その建物の前で、誰かが戦っていた。
一人は僕のよく知る人物で、化生切包丁をふるって自分よりも少し小柄な女性に斬りかかっているのはまごう事なく春夏さん。
もう一人は、多分スキル的に春夏さんポイから多分サムライな人だね。春夏さんの振るう剣を難なく交わしている。
サムライ自体が珍しいから、そのサムライ同士の対戦も相当珍しい。
動いているから確信には至れないけど、春夏さんの相手してる人って、どっかで出会った事あるかも、って思った。
そしてその周りには結構強そうな剣士やら闘士やらのみなさんがそを眺めている。
そんな様子を見ながら、僕と葉山はゆっくりとその春夏さんの戦いを取り巻く集団に近づいて行く。
特に焦ったりしなかったのは、サムライ同士の戦いなんだけど、春夏さんはいつものあんましよくわからない表情だけど、それでもどこか楽しそうで、そして対戦相手は終始笑顔なんだよ。だから戦いって言うより、戯れているみたいだね。互いに真剣で。
その様子を見ながら、僕らに声をかける人物がいた。
「やあ、真壁秋くん、初めましてだね」
そう言うのは、軽装な部類の鎧の上から、ローブを羽織る、一見するとサムライみたいに見えないこともないけど、長髪だからかなあ、それとも目を閉じてるくらい細いからかな? ちょっと違うなかな。ともかく初対面の人だった。
葉山はペコリとお辞儀していたから知り合いみたい。
「こんにちわ、葉山さん、大変だったね」
やっぱり彼女の事情を知っているみたい。
僕も口を開こうとすると、葉山が、
「D &Dの辰野 斗真さん、この深階層で元締めみたいな人よ」
と教えてくれた。
「初めまして、真壁秋です」
おお、深階層のギルドみたいなもんかな? ひとまず、葉山の態度を見るとここは一緒に挨拶しておけと言う自身から謎の判断が降る。
すると、辰野さん、
「本当に、こうして見ると、別人だよなあ、二人とも、あの『死闘』を繰り広げていた人物とは思えないよ」
と言って握手を求めて来た。
僕は手に持っていた剣を持ち替えて、シェイクハンドする。
「本当に、君、鞘とかないんだね、常にそうして抜き身の剣を持っているんだね」
と感心するように言った。
いや、邪魔な時は脇や股に挟んだり、割と色々な持ち方をしているよ、って言いかけるも、まあその辺の印象は勝手にしてもらおうと思うのでいいや、ってなる。
そして、戦ってる二人のサムライをちらっと見て、
「すまないね、今、うちの副長の相手をしてもらっている、あの二人は知り合いみたいだね、私も知らなかったよ」
と言った。
「一心 浅葱さん、春夏と同じくサムライよ」
と葉山は追加説明してくれる。
ここでようやく思い出す、彼女とは面識がある。あのスカイフィッシュでのトキシラズを半身いただいた人だ。
それを考えると、あれからそれほど経ってない印象があるから、深階層までさ、アッという間だったなあ、って、そう感じてしまう僕だったよ。