第2話【深階層始まる】
その後、ささやきの壁で、他の3人は脱落。
凄まじいい精神攻撃を受けたって言ってた。
僕には聞こえなかったんだけど、『男子最低』って声を囁かれたみたいだった。特に鴨月くんは、相馬さんの声で、『鴨月ってそう言う目で私を見てたんだ』って言われて心が折れたって言ってた。
膝を折る彼らに、「行ってくれ」って言われて、僕はそのまま、行き止まりの部屋に入ったって訳。
そこに春夏さんが待っていたって感じ。
最初はさ、まさかサッキュバスさんが春夏さんに化けてるんじゃないかって思ったんだけど、僕が何かが変化した春夏さんと、本物の春夏さんを間違える訳もなくてさ、間違いなく春夏さんだって確信していたから、どうして、とかなんでとかじゃなくて、こんな所でなにやってるんだろ?って思ったんだけど、何かを言いたそうだった春夏さんで、変にモジモジしてて、「ここに来た男の子は待っていた女の子に言わないといけない事があるんだよ、秋くん」って言われて、言われたけどさっぱり何が起きているのかわからない僕は、ひとまず、「やあ」って変な挨拶しちゃって、春夏さんも「うん」って言ってて、それでいいのか悪いのかもサッパリな僕なんだけど、そのあとに「秋くん帰ろ」ってなったから、まあいいか、って感じて、僕らの挑戦は幕を閉じたって訳なんだよ。
まあ、そうんなもんだよなあって一応、例の話は僕の中では決着はついているので、それ以上はもういいかって思っているんだ。
で、今現在、僕と葉山は階段を使って深階層に向かっている訳なんだけど、今日は春夏さんも深階層で途中から合流するとか、後、角田さんも一緒には行けない状況があるらしい。
しかも、今日に限って桃井くんも深階層に先に行かなくてならない用事があるようで、珍しく僕の影の中にはいないんだ。
でもって、葉山と二人っきりって状況なんだけどさ、意外に階段を使うダンジョンウォーカーの数って多くて、だいたい常に誰かとすれ違っているみたいな感じ。
割と健康とかを考えて階段を使う人が多いなあって感心してた。
でもって、このすれ違いの時に、挨拶するんだけど、なんか登山で登と降りですれ違っているみたいな感じて、『あともう少しですよ』とか言ってれる人もいて、常用的に階段使用していると言うか、この深階層への階段の上り下りがその人にとってのダンジョンになっている人がいるみたいで、本当にダンジョンの楽しみ方ってダンジョンウォーカーそれぞれなんだなあって感心した。
そして、なんか深く潜れば潜るほど、気のせいか温度は下がって行くみたいで、それに下がっている階段の奥からは気のせいかもしれないけど、『風』を感じるんだ。
下がる度に、時折する風鳴りが大きくなって行く感じがするんだ。
「いよいよ深階層だよ真壁」
と葉山が言った。
階層は中階層よりは数の上ではないけど、深さはある。
その深階層1階にいよいよ僕は足を踏み入れた。
「真壁、ここが地底の砦だよ」
最後の一団を降りて、割と大きめに作られている開口部を抜けると、そこから大きな風が吹いてきた。
深階層第1階。通称『風の通る大道』
とても大きなフロアだ。
この階層はここを含めて7個のエリアに分けられていると言う話を僕は前以て葉山から聞いている。