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閑話7−12【深き地中から這い出る世界の蛇】

 その美しさは、人を抜け出て脱皮した蛇の如くしなやかな化身。


 まるで、美しい、かつては、神の座にすらとどいたといわれる神話の蛇の様。


 黒い闇を纏うが如くの雰囲気ですら、神々しく感じてしまう。


 そして、今にも蛇の舌が踊り出しそうな、割と大きめな口は笑みなる形を表す。


 人とは思えぬ青と黒く輝く長い髪、真紅に輝く瞳。そしてどこか浮世絵離れした表情に恐ろしいまでに整った顔、何よりその聖衣に包まれた体は、服の上からでも容易にその彫刻の様に整った体を浮き彫りにしている。身長はおそらく八瀬にも勝るとも劣らない長身だ。


 誰もが一目見ればわかる。この女は人ではないと容易くその正体をうたがえる、そんな容姿だ。


 すると今度は鮫島が言う。


 「今度は誰を騙しに来たんだよ、このダークファクトの蛇女」


 すると、彼女はコロコロと微笑んで、


 「嫌ですわ、鮫島様、まるで私があなた様を騙してしまった様ではありませんか」


 「騙しただろ、完全に、おかげで俺はこのダンジョンを追われる立場だ」


 「それは悲しい現実ですね、成功なさっていればよろしかったのに、あなた様の無能を痛み同情し、救われるよに祈りますわ」


 と手を合わせて一礼する。その手の形は独特で右手の平に左手の指先を載せる様な仕草で、何かを意味しているかの様でもあった。


 「回りくどいな、いったい何の用だ? 『世界蛇』人に会いたい人なんてここにはいませんよ」


 HDCUの松橋も口を挟んだ。


 すると、


 「私は皆様の幸せをこんなにも祈っていますのに」


 と呟く。


 そして、


 「皆様の多幸の為にもご忠告申し上げます、既にあのお方は、白き神に見いだされし狂乱の王、真壁秋殿下は我が教団と運命を共にするまさに共同体となっています、余計な手出しをなさらぬ様に」


 すると今度は笑いながら、


 「なにを根拠に? いつもみたいにいやらしい力を使ってくればいいじゃ無い、燃えて爆ぜてもらうけどね」


 そんな此花椿の方を向いて、蛇と言われた女は一礼すると、


 「これは呪われた力を誇る愚かな集落の巫女さま、ご忠告に感謝いたします」


 「いいから、言いたい事を言いなさいよ、で、言ったら出て言って、気持ち悪い」


 と椿も負けてはいない。それをせせら笑う様に彼女は言う。


 「我が教団の主者にして教徒、法皇『桃井茜様』は既に真壁秋殿下なる新たな信徒を導いておいでです」


 もちろんその言葉にここにいる深階層の猛者どもは誰も看過などする意思はない。勝手に言わせておけと、誰もが思った。


 死を呼び死を受け入れ死を願う狂った教団。


 こんな奴まで出てくるのかと、辰野は思う。


 最強のダンジョンウォーカー。


 真壁秋を巡る災厄。


 確かにこの深階層にかつてない大きな嵐を呼びそうだ。


 そしてまた、自身の組織であるD &Dの中にすらその影響力を伸ばしていたと考えると、既に、真壁秋からの辰野の知る深階層への侵食は開始されているのだと実感する。


 そんな状況で今までまるで空気になっていた、あの格闘集団、怒羅欣の北藤臣が急に喋りだす。


 その姿は長らく壊れていた喋る系の玩具が急に復旧した姿に似て、突然現れた、フアナよりもある意味不気味だった。


 その正体は、単純に言うならハンズフリーでスマホで外部と会話を開始しただけのことではあるが、内容はまさに激震に値するものであった。


 「なに!!! 真壁秋が敗北しただと!!!」


 これには誰もが騒めき立った。先ほど現れたフアナすらも、その目を大きくして驚いていた。


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