閑話7−6【此花姉妹微笑む】
ダンジョン内に君臨する、3人の王に勝るとも劣らないと言われている。ここにはいないが、その彼の直下には『切断の豪剣』、現在このダンジョンにおいて数えられるたった数人のうちの一人、サムライの真々地 豪が付き従ってる。つまりD &Dには現在確認されている侍のうち二人が在籍していることになる。
辰野自身の『君主』と呼ばれる戦力に2名の侍。
それだけでこの組織が持つ戦闘能力は他の組織、特に対人においての直接攻撃機系オフェンス力は他の随従を許すことはない。
その他にも呪剣の戦姫他、名の知れた戦士が何人も所在している。
戦闘特化集団と言っても差し支えがなく、数の上ではギルドにも迫るとも劣らない。
それに対して、D &Wの規模は人の数で言うなら10分の1程度、今現在もD &Dには賛同し参加する強者達が後を立たないので、今も尚拡大を続けるD &Dとはそれ以上の開きがあるかもしれない。
加えて、D &Wの方は『導言の学習が可能』と言う厳しい条件をクリアーしないとその組織に参加することはできないので、ここ最近では、姉である牡丹が抜けて、また帰って来たことくらいで、人数については増加はない。それどころか、過去、牡丹が組織を抜けた原因を巡って後に大規模な椿による粛清が行われているので、むしろ数は減っている。
簡単にD &WとD &Dの人員的規模を比べるなら、10倍以上の規模の違いになるになる。
で、あるのだが、その戦力は、むしろ別れてからD &Wの方に大きく傾いたと言っても過言ではなかった。
それは、前衛で戦う戦士系と後方から支援する魔法使いとの決別。
本来では互いの距離、もしくは得意分野での戦いで協力関係にある者達のバランスの崩れた姿であり、ある意味行き着く場所でもあった。
このダンジョン、特に深階層に言われている言葉がある。
それは、
『良く育った魔法使いにとって近接戦闘向きな戦士など、たった一つのコマにすぎない』
いかに強力な戦士であろうと、剣士であろうと、魔法の攻撃範囲を思えばその存在など蟻にも等しい。
魔法は魔法でしか対抗できないのだから。抵抗するにしてもどうしても導言が必要になる。導言を持たない戦士など戦力として数えるに値しないと言うのが、D &Wの基本理念でもあった。
しかし、そんなD &Wにも陰りもあった。
それは、姉である椿の組織からの脱退。
これにはこのD &Wの内部闘争が原因になっていた。
牡丹の魔法特性、それは請負頭を持たない事。そんな牡丹がトップに立つことは、エリートを意識する魔導師にとっては不愉快で不適正で許されない事であり、いつの間にかそれは牡丹に対する陰湿なイジメに発展して行く。
つまり、この姉は、妹の実力の元に組織の上に立っていると思われていたのである。
彼女を比喩する言葉、『童話世界の魔法使い』はこんな所から始まってしまったのかもしれない。
姉とは違い、妹の椿は組織の構成に必死で、特にD &Dの一部(D &Wの独立を面白く無いと思っていた勢力)、からの妨害にも対応していた為、組織を堅持し、その妨害を知らなかった辰野の協力で問題が解決し、気が付いた時には姉の牡丹が組織を抜けていた。
その時、牡丹は自分のせいで組織を割るのわ申し訳ないと思っていたようだ。
例えここで自分が組織を抜けても姉妹には変わりないのだから、と牡丹は身を引いた形になった。
牡丹の実力やその魔法スキルのあり方に疑問を持っていた者、そして、そんなイジメに直接手を下したものは、皆、牡丹の裏切りを進言するものの、椿はそんな者達の言葉など信じなかった。
何故なら、椿には信念がある。
『私が大好きな牡丹なのだから、牡丹だって私が大好きに決まっている、そんな牡丹が私を裏切る筈が無い』
そして、牡丹に原因がないのだから、この辺で牡丹に対しておかしなことを言っている奴らが悪いのだ、と言う最短で結論づけて、その後、大粛清が行われた。
なんの検証も行われず、証拠も求める事なく、淡々と姉、牡丹に対する悪意を持つ者を、そう感じる者を粛清対象にして、痛めつけて組織を追い出した。その行為は、D &Wから追い出すに止まらす、2度とダンジョンに入れないくらいには行われていたようだった。