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閑話6−12【重鎮、腰を上げる】

 『いやいや、だって、今はもう彼女達は一緒に真壁君家で生活する仲間の筈だよ』、って声に出かかってしまう、それを静流は確実に仕留め潰したのだ。


 そんな静流は八瀬を見る。 


 先ほどから八瀬の視線など、気がついていない筈がない静流だ。そして、その目はまるで、『あなたはどうするのかしら?』と囁かれれている様だった。


 この時、八瀬は自分と静流の違いに気がついてしまう。


 つまり、互いに自分の位置を有利な場所に持って行こうとする、その行動において、手段は同じに見えるが、確実にその根底にあるものの違いを見せつけられてしまう。


 つまり、より良く生きようとするのが八瀬だとすると、静流の場合は、確実に生き残るために蓄積されたノウハウという気がするのだ。


 そこには趣味でスポーツをする者と命がけでスポーツをする者くらの違いを感じた。


 そんな物理に作用しそうな刺さりそうな視線に流石の八瀬も目をそらしてしまう。このダンジョンにおいて、真壁秋よりもヤバイやつかもしれないと八瀬は思った。そして、だからだろうか? 静流に同調した八瀬の目は、静流から離れた八瀬の目が、その周りの状況に来て気が付く。


 この女子達、皆、和気藹々とコロコロと会話を弾ませて和やかに時を過ごしてる様に見えて、じっくり見ると、皆、それぞれがダンジョンで使用する武器を携帯していた。


 確実に真壁秋と直接つながりのないものモブっぽい子達すら、チャンスがあれば行こうとしている。隙があれば積極的に行こうとしていた。だから、次の動作で確実にその得物が触れる程度の位置に手を置いて、雰囲気だけは和やかに、必死に『告白ロード』をひた走る少年達を見守っていた。


 その姿は捕食者が自分の巣に落ちて来る美味しい餌を待つ様に、映像を見つめいる姿に見える八瀬であった。その餌を巡って既に戦いは始まっているのだ。


 最近、深階層の強者たちと卓を囲んだことがあった八瀬であるが、その時は、怖さは感じるものの、そこに集まる者達からは感じられない底知れぬ恐ろしさをここでは感じていた。


 今の状況を考えればD &Dや黒の集刃なんて可愛いものだと思ってしまう。


 まさに八瀬の今の心境は、飢えた肉食の怒涛の群の中に、なんの覚悟もしないで混ざってしまったカピパラな気分に近い。食べたい物があるから手を出されない、でもお前如き踏み潰すのは一瞬だそ、と言う立場。


 思わず、


「女子、怖えー」


 と呟いてしまう、自身が女子である事を忘れてしまっている八瀬でもある。


 総じて言うなら、この時点て、葉山静流の言動と行動は八瀬の次の行動すら潰していた。完全にビビって動けない八瀬であった。もちろん、八瀬にそんなつもりも無く、これから先、真壁秋にとって自分に少しでも有利な状況を得るタネでも見つかればいいなくらいで、その為に弟分である土岐お泳がせていた八瀬でもあったのだが、自分が思っていた以上のガチさに、迂闊に動けなくなってここからはほぼ空気と化してしまう。


 ここで、この場は凍てついた様に硬直を見せる。


 誰も迂闊に動くことができない。互いが互いを牽制している空気が張り詰めて、どうにも痛く重くそして、何処か生臭く血の匂いがしていた。


 しかし、ここに来て動き出すのは、多方面に規格外でしかも空気を読まない人物が、全く何食わぬ顔で踊り出る。


 「仕方ないっしょ、じゃあ、行くとするかな」


 そう言って席を立つのは、工藤真希であった。


 ついにギルドの重鎮が動いた。


 彼女がここで行動に出た場合、それを止めることが出来る戦力はここには無い。そう戦う力は無いのだ。


 しかし、その手を掴む手が現れる。


 「ダメです、行かせませんよ」


 と言うのは隣に座る雪華であった。


 「何を言ってるんだべ、雪華? 私が行くしかないっしょ?」


 雪華の強固に掴んだ手から離す気などないと言う断固たる決意が真希にも伝わって来る。 


 そして、立ち上がっている真希をジッと見つめる雪華の目。


 その視線を伝ってやって来る感情を痛いほど感じた上で、ヤレヤレって顔をする真希であった。


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