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第51話【春夏さんを全力応援の構え】

 札幌地下街の人の雑踏が近いこのオープンテラスのカフェエリア。


 冴木さんは、一つため息をつく。


 その息につれて来られる様に憂いを込めた言葉が並んだ。


 「もう、春夏はモテるからね、こういうトラブルは絶対に起こるって思っていたの」


 うんうん、春夏さんは美人さんですからね。


 え? ってことはこの君島って大学生な人、中学2年女子に言い寄っているって事?


 うあ…。顔を赤くしてるよこの人。


 ロリ?


 でも春夏さん大人っぽいからなあ、雰囲気と体格的にはギリか? でも年齢的には? どっちだ? 


 などとゲスな事を考えていると、その冴木さんの言ってることが僕に同情的なことから、ちょっと路線が変わってきた。


 「でもさ、彼らの気持ちもわかるんだよね」


 おっと、雲行きが怪しくなってきたぞ。


 婦警さんていう公共な人が登場して、ようやく暗雲立ち込めていたこの空に一つの光明がさしてきたところに再び暗雲が…。


 「彼らにとって、春夏は、そうね、言って見ればワイルドでアイドルでヒーローみたいなものなのよ」


 僕はせっかく出してくれたスポドリを手もつけずに、彼女の、冴木さんのいう事を黙って聞いていた。


 すると、相当言いたいことがあったのか、彼女はどんどんと僕に思いの丈をぶつけてくる様に話す。


 彼女の話を総合して要約すると、春夏さんは私たちの言う事なんて聞かないから、僕が彼女を道場に戻る様に説得してほしいと言う事らしい。


 「ほんのちょっとでいいの、春夏に道場に来るように言ってくれないかな、時間は短くてもいいの、その後に真壁くん達とダンジョンに行けばいいんじゃないかな」


 言っていることは君島って人との折衷案なんだけどさ、冴木さんの立場というかそれがにじみ出ている表情が、もう、「うぁ」って感じで、思わず同情してしまう。


 何も語らすとも、良識のある方へこういう負担てかかって来るんだよね。


 もう、冴木さんが板に挟まっている姿が想像できる。


 それでもなあ、ってどう返事を返したらいいか、答えにではなくその取り繕い方に悩んでしまって、「うーん」って言ってから思わず形ばかりのそんな乾いた笑顔を、彼女は、


 「そう、真壁君、わかってくれるんだね」


 快諾とはいかないものの、一応は考えてくれた、みたいに取って喜んでいる。


 そんな、幸せそうな思考を踏み潰す様な事を申し上げて悪いんですけど、


 「でも、僕は春夏さんの意思を応援したいです」 


 と、言ってしまった。


 あの時、人混みの中での出来事のときに思った事で、本気で嫌がっている春夏さんが、自分の意思でこの人達の中に戻りたいなんて考えていなかった。


 残酷なようだけど、これは春夏さんの意思でもあって、僕が彼らに言って上げられる事の全てだよ。


 なんか、その言葉を言った瞬間に、周りにあった空気が重く凍てつくのわかる。


 この反応だけでわかる。


 春夏さん、頑なだからね。


 つまり、春夏さんの意思はここにいる君島くんの希望とはかけ離れた処にあるって事を、誰よりも知っているのはこの君島って人な訳で、だから冴木さんに暴走とか言われてしまっていたんだろうなあ。


 僕としてはこれで話は終わりな訳で、これ以上ここにいる理由もないなあ、と思って席を立とうとすると、君島ってヤツはあからさまに敵意をむき出しにしてこっちを睨んでいる。本当にあの時と変わらないなあ。大学生ってもっと大人だと思っていたよ。


 あ、これ、あの時とは違う、確実な害意だね。



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