閑話6−8【愛と勇気の告白部屋(ギルド認定)】
北海道ダンジョン、臨時試聴室(女子更衣室)
その一角に、本部室から大量の椅子を運び入れて、並んでいたロッカーを一時他室に移動させて、ギルドの女子、その他各組織の女子、そして今やこの北海道ダンジョンでは知らない者はいないと言われる真壁秋のパーティーメンバーの東雲春夏と、恐らくはそこに合流するであろうと言われている、ここ最近、その真壁秋との死闘も新しい、葉山静流m彼の私兵団である秋の木葉から多月蒼を含む、おおよそ100人近い女子がここに集結していた。
「真壁秋、土岐蓮也、水島祐樹、西木田翔吾、鴨月重文、以上5名です。突入確認しました」
その室内に何処からでも見える様にと展開されている『パブリックビューイング』の様に展開してリアルタイムで映像として流されている。スクリーンなどによる投影でなく、巨大な画像が中空に浮いている形になっている。
ちなみにこの技術は、シリカのマッパー技術の応用であり、彼女の持つ特殊能力お一つ空間転移の『視点』版と言ったところで、実際に人やモンスターなどを送ったりするほどのカロリーでもなくて、割と軽い覚悟でできる技術でもあった。
だから、シリカは皆が座って見上げる位置から割と遠くにいて、この技術の対価として与えられた各種北海道銘菓を貪る様に食している最中であった。
北菓楼と六花亭とロイズが豊富なお土産に、ご満悦の様子でもある。
「現在、キングコボルトと遭遇、戦闘を開始しました」
と、その画像に現れる様子をオンタイムで実況しているのは、最近、ギルドに入った 数藤 澪であった。
新人ながらその大役を見事に果たしている。
ちなみにギルドに入った動機と言うかキッカケは同じクラスにいた、雪華の誘いであった。澪本人はまさか自分が北海道ダンジョンに、そしてギルドに入るなんてとは思っていた。ただ何と無く、他の女子と同じ様に雪華の取り巻きの中にいて、気が付いた時にはこんな形になっていた。
普通に中学校に通う女子からすると、雪華の立場は、超が付くほどお嬢様で、しかも北海道ダンジョンの中心組織であるギルドの幹部。
学校の成績も、そして容姿端麗もそれに漏れる事もなく、誰が何処から余す事なく多角的に見ても正真正銘のお姫様で、上下問わず憧れの存在になっている。
その雪華に声を掛けられて、他の取り巻きからのやっかみや中傷はあったものの、二つ返事でギルドに入って来たのである。
そこからは、澪にとっては夢の様な時間であった。
ギルドではもう一人の姫様と呼ばれる喜耒薫子はいるし、そして何よりギルドの重鎮で、気さくで北海道ダンジョンのみんなのアイドル工藤真希がいた。
初対面の時には、彼女が年上であるにも関わらず、
「ちっちゃい、かわいい、お人形さんみたい!」
自分自身バカみたいと思える程の大興奮であった。
そんな人物達に囲まれて過ごせるなんて、何か凡人の自分には申し訳がないと思うくらい謙ってしまう澪である。しかもそれにバイト代とかも頂けどるのは、本当にすまない気持ちで一杯になってしまう澪でもある。
しかし、実のところ、最近の雪華の業務に関して、特にあの茉薙を預かる様になってから、鬼激務になってしまって、このままではなんとかしないととは思っていた真希でもあったので、この辺はウインウインで、どちらかと言うとギルドというか雪華の負担が軽減されるは願ったり叶ったりであった。しかも彼女は酷く有能で、それまでの雪華の業務を既に8割程度は消化してくれている。
もちろん、雪華自身が澪のこれらの業務処理能力を見抜いた上で連れて来ているということは、雪華には途方もなく人の能力を、特に社会適正を見抜く能力があるということでもあった。
恐らくは、組織を運営して行く上では、自分を入れた上でもかなり優秀なのではないかと思う真希であった。