閑話6−4【居所不明な18禁であろう特定モンスター】
すると、そんな意思を土岐が察して、
「なんだよ、真壁、お前、信じてないのか?」
「いや、そうじゃないんだけど」
「聞くぜ、言いたいことがあるなら言えよ」
ちょっと考えてから、僕は尋ねた、
「その場所って、どんなところなのさ?」
「どんな所って、おそらくはダンジョンの一室だろうな」
と土岐は言った。
「いや、そうじゃなくて、そこに何かあるのか想像できないんだけど」
だって、そうだよね?
その場所に、土岐たちの言う、その、なんて言うか、あのウッフ〜んな感じにその、あの、お、お、お…、つまりアレだ、その女性の特定部位があるって言うのはわかるんだけど、まさか、それのみがまるで医療模型の様にあるわけじゃないよね。
って事を説明しようとするけど、うまく言葉が出て来ない。
でも流石土岐だよ、察してくれた。
「あ、そうか、そこに誰がいるのかって話か?」
おお、その通りだよ土岐。
僕は激しくうなづいた。
そしてそれには拓海さんが答えてくれた。
「真壁少年、『サッキュバスさん』を知っているか?」
頷く僕。知ってる知ってる、あの悪魔で女性でエッチいモンスターだよね? 北海道ダンジョンにも出るんだね、深階層ともなると。
「そうだ、そのサッキュバスさんはな、この北海道ダンジョンでの目撃情報が無いんだ」
いないんだ。へぇ。
「まあ、がっかりするなよ、真壁、話は最後まで聞け」
とか言う。違うよ、がっかりなんてしてないんだからね。
拓海さんは続けて言う。
「おかしいじゃ無いか、これだけのモンスターを内包する北海道ダンジョンにあって、どうして、何故、そんなサッキュバスさんだけいないんだ? 当時、いや、過去からのダンジョンウォーカーは皆思った、それは何かの力が働いているに違いないと、だっておかしいじゃ無いか、他はみんないるんだ、どうしてサッキュバスさんだけいない、俺のモリガン様は何処にいるんだ?!」
拓海さんもかつてはダンジョンウォーカーだったんだよなあ、過去に強烈なトラウマでもあるんだろうか、悔しがり方が半端ない。
「だいたいな、彼女がいるダンジョンウォーカーなんて、極一部の人間だ、それ以外の恵まれないダンジョンウォーカー男子は、どうやって『おっぱい』を手に入れると言うのだ、そうだろ? 真壁少年」
うわ、目が、拓海さんの目が血走ってるよ。
「落ち着いて、拓海さん、ほら、水飲んで」
と土岐が拓海さんにコップを渡して介添えしながら、水を飲ませていた。
「この人も、苦労していたんだよ」
と一言、そんな言葉を言った。うん、そうかもね。いい人だけどちょっと距離をおきたくなってしまう僕だ。つまりちょっと引いた。
そこからは土岐が説明してくれた。
「つまりな、真壁、過去一説の仮定が出されたんだ」
流石土岐は落ち着いている。
「真壁、このダンジョンにはある特徴があるだろ?」
なんだろう?
ちょっと考え込む僕を見て、土岐はかまわずに話を進めた。
「それは年齢制限だ」
ああ、なるほど、確かに特徴だね。って納得はするものの、で、それがどうしたのだろう?
答えは得たもののいまひとつピンと来ない僕を見て土岐は言う。
「つまりな、真壁、このダンジョンは青少年の活躍する場所であって、その場所にはR18指定の制限がかかって来るって事なんだよ」
ああ、つまり、18歳までしか入れないパグリックな場所では明らかに18禁を超えるモンスターは入って来れないって事なんだね、わかるよ、そうだね、そりゃあそうだよ。
「だからサッキュバス様が現れない、このダンジョンにはサッキュバス様がいない、でも諦めなかったんだ」
その間、ずっと「いいよなあ、サッキュバス様、ほんとにいい」とか、どこに向かって言ってるんだろ?って言う、変な合いの手みたいな拓海さんの心の叫びみたいなのが聞こえて来るけど構わず土岐は続ける。
それにサッキュバスさんが、様に変わった、完全に敬っまっちゃってるんだな。
「このダンジョンにはさ、それこそ数限りな種類のモンスターが存在して、これはあくまでも噂の範疇だろうかそれは今も生まれ続けているんだ、つまいダンジョンウォーカーが、男子が強く思えばきっとダンジョンは叶えてくれる、みんなそれを信じた、もちろん根拠なんて無い、でも、そうだろう、このダンジョンはさ、『子供の子供不幸を許さない』みんなそれを信じたんだ」
暑苦しく、いや熱く語ってくれるんだけど、なんだかなあって感情の方が強くて、ちょっと覚めてる僕がいるよ。こう言う時って、一瞬でもこんな流れに乗り遅れるとどうも冷静になってしまう。と言うかこの生暖かい本流に2度と乗れそうもない僕だったよ。