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閑話6−3【駆け上がる双丘はあまりに遠く】

 てっきり僕、あの鉾咲さんの事だから適当な事を言われていたって思ってて、まあそれはあの鉾咲さんだから仕方ないとは思うけど、あんまえり意識してなかった割りにはあっさりと思い出せた。


 でも、だからこそ思う。


 「それって、本当にあるの?」


 すると土岐は不敵に笑って、


 「まあ、俺も色々と独自に調査してな、色んな人に話を聞いて裏を取っていたんだよ」


 え? 聞いたの、そんな事、いろんなダンジョンウォーカーに? 大丈夫?


 「さすが土岐さんだよな」


 と水島君が気持ち悪いくらいに頬を赤らめて褒めてるみたいに言う。


 「でな、この前、深階層でちょっとした集まりがあってな、そこに来たこのダンジョンの重鎮とも言える人たちからも話を集めたんだ」


 え? だから、そんなことして大丈夫なのか土岐?


 「真壁、D &Dの辰野さんって知ってるか?」


 首を横に振る僕だよ。


 「そうか、まあ深階層での元締めみたいな人なんだけどな、この話を持って言ったらきちんと答えてくれた」


 そんな、深階層の重鎮まで巻き込んでいたのか…なんか会ったことないけど、こんな話に付き合ってくれるなんて、きっといい人っぽいなあ、その人。


 「一応、俺も身内としてある程度の話は聞いてたんだが、八瀬の奴、なかなかその場所へのルートについては話さなかったんだ、一応はそれとなく聞いてはみたけど、こっちもさすがにダイレクトに尋ねる訳にも行かないくてな」


 そりゃあ、『姉』みたいな人に、その『ウッフ〜ン』な事を聞くわけいかないからなあ、そうだろうさ。


 「でな、その辰野さんや、小々島さんやらからの証言を取ったんだよ、意外なことに鮫島さんまで協力してくれたぞ、お前の名前出したらな」


 また知らない人が出てきたぞ。え? 僕の名前出したの?


 「ちょっと何してるんだよ」


 って思わず攻めたら、


 「まあ、待て、迅る気持ちはわかる、俺もそうだった」


 違うよ、違う。そっちじゃないよ、今の僕が問題にしているのは、僕の名前を出して色々聞きまわていた事だけど……。


 しかし土岐のヤツ、そんなの全く問題にしないで、話を続ける。


 「そして、今回、ここにいる塩谷さんのおかげで、その証言の裏が完全に取れたんだよ」 


 ああ、そうか、だからこの人ここにいるんだ。


 と言っても、拓海さんと土岐の接触点がわからない。


 「地下歩行空間の休憩スペースでな、ノートに集めた情報を整理していたところ、塩谷さんが偶然、俺に声をかけてくれたんだよ」


 え? ノートに整理してたの? そんな人通りが多いところで? 人目も気にせずに? で、今回の拓海さんとの出会いも偶然だったんだ。


 「あの時の土岐少年の、あの熱意に当てられたよ、俺も確かにそんな熱くて多感な時期を過ごしていた、いやあ、懐かしいなあ」


 どこか遠い目をして拓海さんが言った。


 「そして確信したんだ、今こそ、そこへ挑戦するべきだってな」


 ごめん、何処へ誰が挑戦するんだか、その辺の説明がないと、当事者ではない僕としてはさっぱりわからないんだ。でも土岐と拓海さんはどんどん盛り上がって行く、そして水島君とか、西木田君とかも一緒に、僕と鴨月君は完全に置いてけぼりになっている感じがしてならないけど、ここに乗っかってしまっては、なんと言うか人としてダメな気がするんだ。すると、


 「ほら、真壁、お前もついてこいよ、『おっぱい』の話なんだぞ!」


 だからどうして土岐がキレてるんだよ、で声が大きいよ、ほら、あっちの家族連れが見てるよ。あ、会話も聞こえてくるんだけど、なんかお父さんの方が気を使って、「ほら、ダンジョンウォーカーの男の子は必ず通る道だから」なんとか言ってお母さんと小さな子供をこちらの会話への興味をそらしてくれている。そして、ちょっと逢った目が、『頑張れ』ってそう訴えかけてくれた。


 「話聞いてるのか? 真壁!」


 ああ、ごめん、まったく聞いてなかった。


 「だからな、『おっぱい』を手にできるんだ、俺たちは、あの『おっぱい』を入手できるんだよ」


 土岐は相当に興奮して言った。まるで長らく求めていたレアアイテムでも手がかりを見つけた様に、そして、鼻息も荒く変態さんみたいにそう言った。思わずその熱意というか、その種の大きな気持ちに押されてします僕だよ。


 「う、うん」


 もうそうしか言いようがない。


 「行くぞ、真壁」


 と土岐は言う。


 「場所の特定、そしてルートはわかった、もう行くしかないだろ?」


 と念を押される。


 なんか、水島君と西木田君は盛り上がっている。


 まあいいけど、僕はまだちょっと納得できないと言うか理解できないところもあるんだ、かだからちょっとなあ、って思ってしまう。



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