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閑話6−2【少年達が夢見るはたわわな双丘】②

 口火を切ったのは土岐だった。


 「なあ、真壁、八瀬の言った言葉を覚えているか?」


 土岐が身を乗り出して僕に小声で言う。


 八瀬ってあの鉾咲さんだよね、クロスクロスの副団長さんで、良くも悪くも僕に積極的に絡んで来てくれるあの鉾咲八瀬さんだよね?


 彼女、思わせぶりで色々なこと言ってるからなあ、今まで言われて事を思い出してそれっぽい事をチョイスしてみる。


 「あのギルドの嘘の事?」


 「ちげーよ、今はそっちじゃねーよ、もっと大切な事だよ!」


 いきなりキレられる。いやあ、そのくらいしか…、とサッパリ分からないって顔をすると、


 「こいつ、家に姫様や葉山さんとかいるから、そういうのには困ってないのかもな」


 と水島君がそんな事を言った。


 薫子さんとか葉山の事とか関係ある事なのだろうか?


 「ほらほら、ダメだよ、そんなに焦ってはダメだ、ここは大人に任せてもらおう」


 そして、拓海さんは言った。とても落ち着いて、ゆっくりとこう言った。


 「真壁少年、君は『おっぱい』についてどう思う?」


 え? ごめん、なんて言ったの? 聞き間違えかなあ、何かこう、いい歳した大人の言葉とは思えなくて、あれ? なんかおかしくないかな。


 「いや、だからさ、どう思っているかって、聞いてるんだよ」


 だから、どうして土岐がキレてるんだろ?


 「いや、どう思って言われても、正直困る」


 「俺は好きだぞ」


 だから、土岐、一体何を言ってるんだ?


 で、いい年した大人な拓海さんもそれに乗っかって、


 「だよなあ、それは私も一緒だ」


 そして、一呼吸置いてから、


 「君たちはどうだ?」


 間髪入れずに水島君が、


 「好きです」


 と言う。


 完全に言い切った。


 「嫌いな奴なんていないだろ」


 今度は西木田君も言う。


 「ねえ、ちょっと落ち着こうよ、こんな人前でするような話じゃないよ」


 よかった、仲間がいた、鴨月君は僕と同じ考えだ。


 「違うよ、重、今は、好きか嫌いかを聞いているんだ、場所とかそんな事じゃねーんだよ」


 いや、場所大事だよ、少なくとも真昼間のご家族づれに大人気なビクトリアステーションでする話じゃないよ。


 水島君に続いて西木田君が、


 「あ、そうか、お前、相馬奏のに気を使ってるんだろ? 最近、コソコソ、ギルドの仕事が終わってダンジョンから出た後も会ってるらしいじゃん」


 え? そうなの?


 そんな恋バナに耳がダンボになってしまう僕がいる。


 「違うよ、そうじゃないあれは…」


 と言って口ごもる鴨月君。さすがの僕も口をはさむよ、


 「そんなの鴨月君とかの勝手じゃないか、ねえ」


 と声をかける。大丈夫、僕は味方だよ。


 そしたらさ、鴨月君は何を思ったのか、意を決して僕に言うんだよ、


 「違うんだ真壁君、僕、相馬さんに言われて、社交ダンスのパートナーを付き合ってるんだ、今度、ジュニアの北海道大会があるから、それに一緒に出ようって、頂点を目指そうって言われていて」


 ああ、なんだ、あの時のリリスさんに叩き込まれたダンスをこんな形で昇華していたんだ。凄いなあ相馬さん、ほんと、アスリート気質だよね、一体どこに向かっているんだろあの子。


 「お前、社交ダンスって…」


 流石の水島くんも驚いている。まあそうだよね。


 「競技にかこつけて、女の子に最接近しつついろんなところに触れれる奴だろ、やるなあ!」


 なんて事を言う水島君だ。ひどい誤解だよ。


 謝って、社交ダンスを真面目に競技として真剣に取り組んでいる人達に謝って。


 「ほう、その歳でなあ、やるな、鴨月少年」


 と、どうも、この拓海さんも社交ダンスをおかしな方向に勘違いしているみたいで、『合法だな』とか変な褒め方してた。


 そんな感じで僕らの座るボックス席が和やかになっているのに対して、土岐が、


 「だから、真壁、八瀬の言った事を思い出せよ、あったろ、男の本能に訴えかけてくる奴が」


 そう言われて漸く気がついた。


 「ああ、あの!」


 先に言葉が出てしまう。


 「そうだよ、『あの!』だよ」


 土岐のテンションが上がる。


 鉾咲さんと初めて会った時に言っていた、秘密の場所、『中階層の秘密ダンジョン、ウッフ〜ンんなあの場所』の事を思い出した。


 僕、最近、真っ白に限りなく近い肌色な葉山を見て、こっち方面の事って全部吹き飛んでたからさ、ああ、そうか、あの場所の事か!


 なんだろう、僕のテンションも上がって来たよ。


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