閑話5−5【多月分特殊家 百家の娘】
現状、ギルドと真壁秋についての関係は良好で、彼女の能力を利用できる上での放置はギルドとしても都合がいいので、その辺は放置というか自由にさせている様でもあった。
そんな紺に秋との仲としてそれなりに気を使う水島であった。
「ああ、蒼様が一緒だから大丈夫っす」
そして、
「それに、私の場合はギルドに潜伏が主な任務っすから、このままでいいです、大人だけど弱い水島先輩を全力てフォローするっす」
「弱いとかいうなよ、お前ら化け物見たいな連中と一緒にすんなよ」
「何言ってるっす、私は『百』家の中じゃ、一番、蒼様に似てるって言われてるっす、だから可愛いっす、化け物は酷いです!」
水島の為にも言っておくが、彼の言う化け物とはあくまで戦闘能力であって、容姿のことでは無い。だから言い直そうとするが、なかなか紺は納得してくれなかった。
激ししく口論しながら、二人は浅階層に向けて旅立って行った。
そして、茉薙は既にギルド本部に進入していた。もちろん、茉薙の存在は、ギルド全員に認知されているので、特に警戒もされないで、本来、関係者意外は立ち入り禁止な施設であるが、茉薙なら自由自在になっている。
最近、茉薙を引き受けてからと言うものの、雪華の業務は膨大な物になってしまっていた。そこで、「みんな、雪華の日常業務を引き受けるべ」と言う真希の提案から、簡単な作業、雪華でなくても熟せる専用性の無い物はギルドの全員に割り振っていた。
その中でも、ダンジョンの業務(見回りや迷子の探索)については、秋の木葉とクロスクロスの比較的使えそうな人員を貸し出してもらい、その辺についてはなんとかなっているのではあるが、この日常業務についてはそうもいかなかった。
簡単なデーター入力の業務でも、結局、雪華の様に淡々と日々、ミスもなくてこなしてくれる人間の存在は大きく、不慣れな者が作業を続けても、結局ミスして、そのミスの修正の為に時間を食われる、作業量は減るどころか増えて行く一方で、この業務に当たっている物は口々に雪華の存在の大きさと言うか、偉大さを改めて知った思いでもあり、実際、言い出しっぺの真希も、パソコンの前でなれないデーターの修復と入力作業に追われていたのである。
そこに、この茉薙の登場である。
一瞬、キモを冷やす真希であった。なぜなら思う様に仕事は進んでいない。今の時点で
は「何も進んでいないじゃないですか!」と雪華に言われる状態だ。
『お前が一日二日いなくてもギルドの方は大丈夫だ』と言った手前、この様な実情を見せる訳にはいかない。なんとしても明日までになんとかしようと思うと言うか追い詰められている真希であった。
この所、雪華との力関係がなんかおかしいんだよなあ、あいつ人に向かってズケズケと言うしなあ、最初の頃の雪華は可愛かったなあ、今じゃ私に対しても普通に怒るし。もしかして、私、尊敬されてない? 対雪華との人間関係に置いて、なんとかしないととは思う真希ではあるが若干の手遅れな感じと、今の状況も悪くは無いと思いつつ疑心暗鬼になっている真希でもある。
ちなみに、こう行った状態に陥らない様に雪華がスカウトして来た澪は、試行錯誤する真希など存在しないが如くに、パソコンの前で、神の御技の様に作業を進めている。
状況は極めて深刻だった。
何と言っても雪華が綿々と積み重ねてきて構築させていた、ダンジョンウォーカーの管理システムの一部の破損は、まさにギルドの窮地を招いていた。