閑話5−4【安全完全に困窮するギルドの現事情】
本州からスカウト組として来て、ギルドに加わる百目は、見た目にちょっとボヤッとしてはいるものの、名前からもわかる様に、多月の分家であり、つまりは、秋の木葉である。
その戦闘能力は極めて高く、あの秋の木葉の首領、多月蒼に迫るとも言われていた。だからだろうか背格好も似ている。そして、その為だろうか、無理やり特徴を出すために、ちょっと個性的な髪の纏めて方をしている。
そのヘアスタイルはちょっと残念系だった。
紺とは初対面だった茉薙は思う、こっちのペッタンコは雪華ほどでは無(ペッタンコ具合が)い相当に強いなと、もう一人のペッタンコはそのペッタンコを活かしきれていない感じがして大した事なさそうだ、などを考えていた。もちろん一人の大した事ないペッタンコは水島である。ちなみに水島とは初対面では無い。西木田、鴨月ともに雪華の忙しい時は、このスライムの森、ギルド内部で面倒を見てもらっていた。
で、その水島なのだが、
「なんで、茉薙が先輩なんだよ?」
と自分の後輩の紺に尋ねる。
すると、
「いや、だって、茉薙先輩って、あの葉山先輩の中で育ったってことは歳は一緒ですよね?」
と、確かに水島と同級生の葉山静流と同じだとしたら、ここにいる茉薙は、紺の一つ年上と言うことになるなあ、と水島も思ったけど、どう見ても茉薙の外見は良くて小学校中学年くらい、いや、その顔の幼さは低学年と言ってもいいかもしれない。
でも、その時、葉山静流に移植された年齢と移植された当時部位であった茉薙が同じ歳とは限らなくて、むしろ今の見た目がその本当の年齢なのでは、と割りと真面目に考える水島である。
「なんだよ! ジロジロ見んな!」
と水島の足を蹴飛ばす茉薙だ。
痛いけど、まあ、小学生のやる事だしと、考えてしまう水島は意外に大人である。
「こら、乱暴すんなよ」
と言うに止まる。
もちろん、茉薙はそんな水島に、何も言わずにギルド本部に駆けて行ってしまう。
「雪華先輩は一緒じゃないんですかね?」
「まあ、大丈夫だろ、中には真希さんもいるんだし、さ、俺たちは仕事に行こうぜ」
「あ、はい、水島先輩」
と水島の後ろを着いて行く紺である。
そして、
「水島先輩って意外に大人なんですね」
と紺が言う。彼女の水島への印象としては子供のやった事でも大人気なくガチに怒るタイプと踏んでいた。
「いや、だって、茉薙、かわいいじゃん」
と、その言葉に素直に驚く紺は、
「意外ですね、茉薙の顔って秋先輩の小さい頃の顔ですよ?」
「秋もいい奴だぞ」
「そうですか」
「そうだよ」
「意外です」
「そんな事ねーよ」
水島としては、茉薙の誕生というか蘇生から知ってる訳で、その後を見守っている様な感覚になっているらしい。色々とあったが、少なくとも茉薙は助かって、これからはどんな事があっても同じダンジョンウォーカーとしての仲間であって、何よりその蘇生にギルドの仲間が関わって、何かと力になってくれる真壁秋とその仲間の葉山静流も、なんと無く身内な感じがしていて、取り分け、特に何かをしようと思っていないのではあるがひとまず見守ってゆこうと言う姿勢でいる様だ。
「意外に大人なんですね」
と、失礼な紺の関心は続く。
「そんなことより、お前、秋の木葉の方はいいのかよ、今、あいつら深階層だろ? 武器がどうのこうの言ってたけど、お前はついて行かねーのかよ?」
紺が秋の木葉であると言うことは既にギルド内部では公然の事実となっている、と言うか、紺自体がその様に触れ回っている。だから度々招集を受けると、きちんと秋の木葉の活動としてギルドから離れて行く時も多々ある。まあ、生徒会の役員の生徒が他の運動部の試合に駆り出される様な物と言うのが一番シックリ来る立場なのかもしれない。