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閑話4−1【排除し切り分けられたモノ】

 さて、話は少し前に遡る。


 中階層『戯れ踊る竜と囁き歌う剣が凶つ部屋』で行われた、このダンジョンで新たなる伝承戦が追加された直後の出来事だ。


 『大いなる私闘』の一つ、『剣舞う日帰り戦争』(別名『大いなるグダイチャ(グダグダとイチャイチャの合成語)戦』)と呼ばれるようになる、後の聖王と狂王との戦いの直後の話。


 この戦い、結局誰が勝者で誰が敗者で、そして誰が、何を得て何を失ったのかが全く不明で、観覧者もまた、張本人ですら、その正体も掴めぬまま戦いは集結され、一応の決着がついた時、葉山静流は、その肉体を共にする者たちから放たれ、そして命を永らえることに成功した。


 これは北海道ダンジョンの意思でもある。


 彼等を生かせと言う明らかな意思が示されたのだ。


 この意思に一番最初に答えたのは、今は神格を失って久しい、行きがかり上、狂王に保護されている立場にいた『贖罪と鏖殺の女神ブリド』であった。


 かの神より、葉山静流の肉体から、『茉薙』の部位である、内臓の消化器系と呼吸器系、そして脳の一部が、父の心臓、そして、それ以外の大腿部の筋肉と、背骨の一部が切り離された。


 これによって、葉山静流は元どおりの、『いまにも死にかけている葉山静流に戻る。


 切り離された部位については、ブリドの一部の神格を有する(現在は失っている)鉾咲八瀬によって作られた時を止め空間を切り離す召喚箱の中に乱暴に放り込まれた。


 残された本体。欠損した部位が多いとは言え、その体の大半が葉山静流彼女であるがゆえに、その蘇生は比較的に簡単に行われ、彼女は、この北海道ダンジョンの助力も加わって、一応の解決、つまり、回復を経て、そのままかねてより彼女の保護を申し出ていた『真壁』家に引き取られる形で、彼女単体としては一応の解決を見た。


 その後、葉山静流は当事者でありながなら、この現場からの退去を命じられる。


 それは一重に、『もう、後は家帰って仲ようくやれよ』と言う心遣いだけでなく、ギルドをはじめとするダンジョンの運営としてこの後の決定に関して、彼女をこの場に残して置かない方が何をするにもやりやすいと言う判断もあった。


 つまり、それは人では無く、スキルを保持した肉体の部位になってしまった、かつて、葉山静流の肉体として生きていた、茉薙と言う名の少年の扱いについての事だ。


 残酷な結果になったとしても当事者がいない方が良いと考えられた。


 それはこの時点では、誰にとっても残酷な結果となると予想されている、今はもはや人とは呼べなくなってしまった少数部位になってしまった葉山茉薙の放棄である。


 この時点では、これら肉片とまでに解体された茉薙復活の手立てなどないのだから。残忍な事とはいえ、当たり前の流れとも言える。


 これがダンジョン内で、戦闘や事故により一般のダンジョンウォーカーが、このような自体に陥ってしまっているなら、例え髪の毛一本、肉片と化しても普通に蘇生はできる。


 なぜなら、それは、かつては人間だったから、その記録はこのダンジョンと、何よりその部位に歴然と残されているので、その蘇生や復活は通常として行える。


 だが、ここにある部位は人としての経歴も記録も無いのだ。葉山静流がこのダンジョンに入ってからは、肉片としての存在しかない。否、生まれた時ですらこれらの部位は人と呼べる物ではなかったのだ。だから蘇生を行えばその人に成れなかった物へ戻される。


 かつて茉薙と呼ばれていた少年は、いま、この金色の宝箱の中に入っている物が全てなのだ。


 表現の仕方が悪くなるようだが、スーパーでパック入りで売られている挽肉の方がまだ量的にあるくらいの、そんな内容が切り離された人としてそこにはあるのだ。


 重さにして100gにも満たない。


 「なんとかならないべか?」


 一縷の望みを残して、ギルドを支える事実上の最高幹部、工藤真希は未だ幼さを残す河岸雪華に尋ねた。


 彼女は、本来、蘇生が不可能と言われている静流の方も、空間を作り出す事が出来る奇跡の力を持つ、佐藤和子シリカの協力でなんとか出来た。


 だからこの絶望に包まれる中、未だ未知なる雪華のスキルに最後の願いを託していた。


 そして、そんな状況で、現時点では確実にそれを不可能と思う者もいた。


 それは、雪華にそのスキルの開眼をもたらした、三柱神の一柱、慈愛と破壊の女神『アモン』である。


 アモンが切っ掛けにより雪華の中で開いたスキルはメディックという、回復系でも特殊なスキル。


 本来は、自身にのみ向かう回復復元系のスキルで、復元を目的として肉体や状態を正常のものへと、あらゆる損傷を修復する。


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