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第270話【そして雪華は夢の中へ】

 玄関で見つめ合う、葉山と茉薙。


 本当に良かった。そう実感すると、そこにパタパタと母さんがやって来て、


 「あらあらあら」


 とかとても嬉しそうに茉薙に駆け寄って行く。


 そして、茉薙の顔をジッと覗き込んで、言う。


 「小さい時の秋にそっくりね」


 ああ、そうか、この顔、僕の顔だった。あの戦いの中で僕の意識に出て来たあいつよりも若干尖った感じがするからちょっと気がつかなかったよ。


 すると、母さんの後から来た薫子さんが、僕と茉薙を交互に見て、


 「雪華、お前…」


 と、とても残念な人を見る目で雪華さんに言う。


 「ち、違うんです、私、男の子なんて知らないじゃないですか、だって、仕方ないんです、秋先輩ってカッコイイじゃあないですか、私必死だったんです、でも男の子だったら秋先輩がいいなあって、素敵だなあって、強いし、優しいし、ちょっと適当な所だって可愛いじゃないですか、もうどうしようもないんです、本当に無意識だったんです、確かに、疲れて意識が飛びそうになるたびに秋先輩に『頑張れ』って言ってもらっているって思い込みながら、ああもう、だから、いいんです、、真希さんみたいに笑ってください、奏みたいに呆れればいいんです、なってしまったからもう、仕方ないんです」


 立ちすくして見る見る沈んで行く雪華さん、本当に疲れてるんだなあ、って気の毒に思った。


 はっきり言って、雪華さんが何を言っているかわからないけど、僕はそんな彼女の姿を見て感動していた。


 だって、疲れているのにさ、一番最初にここに来てくれてんだよ。


 葉山のために、茉薙の為に。


 「しばらく、茉薙くんは私が預かることになりました」


 と言って、


 「私も初めて人を造ったので、多分、いいえ、きっといろんな所に不備があると思います、だから、細かく調整、対応しながらしばらく見守ってゆきます、片時も目が離すことができませんから」


 そうなんだ、雪華さん的にはまだ終わってないって事なんだね。


 まあ、顔の方はともかく、本当に雪華さんはそのスキルで、多分いろんな人に協力してもらったとはいえ、本当に、ほぼ人間を一人で造ったんだ。


 戦いう事のみスキルって片寄って注目されがちだけど、多分、この行為、数個の部位から人間を創り出せるこの能力って、回復でもなく、蘇生でもない。ある意味伝説級だと思う。今までそんな事した人っていないと思う。


 そんな風に感心していると、


 「秋先輩、私、ちょっと休んで行きたいんですけど」


 うん、そうだね、ちょっと休んで行った方がいいかもしれない。


 そう思って、客間に案内しようって思っていたら、


 「私、秋先輩の部屋がいいです、絶対秋先輩の部屋がいいです」


 ってすごい必死に言ってくる。そして、


 「そのくらいのご褒美が私にはあっても良いと思うんです、良いですよね、ダメでも行きますよ、私行きますから」


 「う、うん」


 「あ、部屋は知ってますから、じゃあ、寝ますね、秋先輩のベッドだあ、やったぁ!」


 とっとと僕の部屋に行ってしまった。


 フラフラだけど、キャッキャとはしゃぎながら、さっき目を離せないって言っていた茉薙を置いて行ってしまった。


 きっと疲れてるんだな。


 だってさ、あのお嬢様で優秀で利発な雪華さんがそんな事を言うわけないじゃん。


 きっと僕なんかが想像もできないくらいの色々あったんだよ、ほら、疲れすぎてしまってるんだよ、色々見えちゃってるんだよ、今ちょっと危ない人なのかもだから、放って、いやそっとしておこう。


 本当にご苦労様でした。


 雪華さんはともかく、僕的にはこれで本当に終わったんだな、ってそう思った。


 そして思う。


 母さんに頼んで部屋に鍵を付けてもらおう。


 僕だって、ぐっすり眠りたいからね。

 

 

これで、中階層本編は終了です。

主人公目線を離れた『閑話休題』で物語の補足をしつつ

おっぱいの後、いよいよ深階層です!



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